小さな夢を拾うところから、再スタートしようかな。


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ここのところ納得の行く文章が書けずにいる。
どのくらい書けていないだろうかと、思い起こしてみた。

最近で一番手応えがあったのは、「サポーターをめぐる冒険」の最終章。賛否両論になるだろうと思ったのだが、意外にも評判が良かった。なんで最後に、こんなエピソードが来るのか理解できないという人も多いかなと思ったのだが、「何故、Jリーグのサポーターに惹かれたのか」を謎解く重要なエピソードであると同時に、読み物としても魂の入ったものに出来たのも良かったのかもしれない。

もちろん、完璧とは言えない。しかし、その時のベストは尽くすことが出来た。これは自分で言うのも何だが、なかなか珍しい書き口なのだ。「サッカー観戦の即時的楽しみ方」については、多くの人が語っている。つまり、1つの試合をいかに楽しむかという方法についてだ。代表的なところでは、海賊の清水さんが書いているこの本。

サッカー観戦の「即時的な楽しみ方」を追求する上で、王道的な本ではないだろうか。

一方で、「サポーターをめぐる冒険」が目指したのは、「自分史的な楽しみ方」なのだろうと思う。1つの試合を楽しむのはもちろんのことだが、試合で体験したことや試合結果、あるいは試合の周辺で起こった出来事や人間関係を、自分の歴史の中に組み込んでいくような楽しみ方だ。

表現したい内容があり、それを表現するために一見関係ない大学時代のエピソードを持ってくるという危険も冒した。そういう意味では、挑戦的であり手応えのある文章だった。

後は、リオデジャネイロで半分徹夜しながら書いたこれと……

「開幕戦をリオデジャネイロのパブリックビューイングで見ていたら、予想と違っていて非常に混乱した」ブラジルW杯紀行 第五話 | はとのす

東京vs浦和について書いたこれ。

Jリーグ観戦に外れクジはあるのか。味の素スタジアムに燃えたぎる炎。FC東京vs浦和レッズ。 | はとのす

この2つは熱量こそあるものの、何かが足りない。前者は、推敲する時間がなく、執筆環境も悪かった。後者は、テーマとの絡みが若干弱い。もう少し練りたかった。

それはそれでいい。悪い文章ではない。
しかし、重要な問題も内在している。それは、表現するべき大テーマが欠損していることだ。


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「表現するべき大テーマ」とは何か。

翻って考えてみると、そもそも2つあったことに気付く。

1つは、「ネガティブ」かつ「惰性」で他者や環境に対する不平不満ばかり言うようになった研究時代の反省を元に、「ポジティブ」かつ「目標を持って」生きて行くことがテーマでした。
その表現として、「大人も夢を持ち、夢を叶えるために努力すること」を強く唱えるようになりました。

そして、その「夢」というのが「作家」になることであった。幸運にも恵まれ、夢は叶った。作家とは、作品を作る仕事をする者であり、「サポーターをめぐる冒険」という作品を世に出し、ささやかながら報酬を受け取った時点で、紛れもなく作家になるという夢は達成された。

逆に言うと、発展的にではあるが、夢は消失してしまった。

夢を失ってしまったため、現実的な目標から数え始める。 | はとのす

もう1つは、「サッカー観戦をし始めた頃の心情」を表現するというテーマ。これは、偶然ではあるが、Jリーグを初観戦し、その時感じたことが多くの人に共感されたことを受けて、その心情を何とか表現しようとした(Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった。 | はとのす)。

誰もが経験しながら、いつの間にか忘れてしまっていたもの。それを正確に言葉に変換し、固定し、保存する。この先のぼくがどういう姿勢のサポーターになるかはわからないし、もしかしたら誰にも受け入れられないような「キワ物」になっていくかもしれない。

しかし、スタート地点に関しては、多くの人と共通したものであったことは間違いない。それはそれで価値のあるもので、忘れないうちに保存しておくべきだと考えた。刻一刻と薄れていく心情が色あせないように、書き記して行った。

この作業は言うまでもなく、1つの結晶になった。

ただ、ここで1つの問題点が出来る。
サポーターとしての心情を書き記す上で希少価値が高かったのは、「初観戦」から「サポーターとして固定」されるまでのストーリーであった。FC東京サポーターとして固定されてからは、普通のサッカーファン、サポーターと変わらない存在になった。サッカーという競技についての知識が多いわけでもない(最も、時間をかければある程度見れるようにはなる自信があるが、今は「わからない状態」で見る楽しさを追求しているため、知りすぎないようにしている)。

もちろん、物事を整理したり、論評をするのは一般の人よりも得意だろうから、あーだこーだと文章を書き連ねることは出来る。しかし、そこには「大テーマ」がないのだ。

脊髄反射的に、出来事に対して思うことはあるものの、「この後ろに果たして大テーマはあるだろうか」と考え直すと、紛れもなく、存在していない。従って、論説を行う大義もない。「敵の姿がみえない」状態ともいえるかもしれない。

ここ数週間の間に、サポーター界隈で盛んに議論された某クラブの「ウルトラ」のBlogや横浜FCの告知文についても、思うことはあっても断定的に論じることは出来ない。

「ゴール裏はなんでもありだ!」とまで言われると、それはNoだと思うが、そもそもぼくはゴール裏を中心とした応援の魅力に惹かれて、サッカー観戦を始めている。だから、Noとも言いがたい。最近はバックスタンドに座ることも多いが、一番爆発的に楽しめるのはゴール裏であることも体験したのでわかっているのだ。

だから、「アンチゴール裏」とか「コアサポーター不要論」とかを言うつもりは全くない。しかしながら、例えば「中指公認」というような主旨のことを、大声で言い出し始めたら、「それじゃ新規のお客さんが増えなくなっちゃうよなぁ……」と思うのも事実だ。

例えば、サッカー観戦をしたことがなかった人を連れて行った時に、一番気にするのが「ブーイング」についてなのである。学生スポーツ(部活)や武道を経験してきた人には、強い違和感があるようだ。なかなか難しい。これらについて、何かを書くことは出来るが、大テーマが定まらない状態での提言は、後で矛盾してしまう危険性もある。

もちろん、意見が変わるのは悪いことではないが、風見鶏的に、あるいは脊髄反射的に、その場しのぎの感想をいうだけでは、論者として貧相である。

もっとも、矛盾が大きく、多くの人が気にくわないようなことばかり言っているほうが、PV(ページビュ-)は稼げる。つまり、お金は稼げる。何故なら、今のウェッブビジネス上では、PV数=収益だからだ(つまり、一時は武器であった「晒し」という行為も、「売り上げへの貢献」となっている)。だから、何か揉め事の種を見つけると首を突っ込んでいって、PVを稼ぐという炎上商法ならぬ、「火事場泥棒商法」は1つの王道となりつつある。

しかし、これはあんまりやりたくない。人の悪意が渦巻いているところに突っ込んで、さっさとお金を回収してくる手法は、必要悪と割り切ることも出来るが、その場で手に入る金銭以上のものは得ることが出来ない。

もちろん、言うべき事は言うべきだ。しかし、大テーマが定まっていないため、言うべきことが定まらない。一連の騒動で、ぼくが言うべきだなと思ったのは「松本山雅サポーターはそのままでいいと思うよ」という意見くらいで、ゴール裏の自浄作用がどうとか、憲法がどうのとかについては、根拠のある論説は出来なかった。

クラブについてのサポティズムについては、どういうテーマを見出すことが出来るのかが、今後の課題と言える。そういう意味では、現在は修行中であり、思考中ということになる。これは、日本全国のクラブを回る中で見えてくるものもあるだろう。

・1年間、FC東京の全試合を現地観戦する
・J3までの全クラブのホームゲームを観戦する

※J3以下も行くが、全部回るのは無理。

このいずれかを達成することが出来れば、何か見えてくるものがあるような気がする。

もう1つ、日本代表サポーターについても、これは非常に難しいテーマなのだ。

日本代表サポーターとは、日本国民のことであり、日本代表サポーター論とはすなわち日本人論にまで発展する。国内クラブ論と比べると、アクターが桁違いに多い。誰でも参加できて、誰でも語れるのが日本代表。だからこそ、総括するのは難しい。

大事なテーマだと思うので、じっくり考えて行きたい。ブラジルの総括本を出したいのだが、一番後回しになってしまう。

「サポーター論」については、もう少し熟成しないと言えることは少ない。多くの試合を観て、多くの人と話し、多くのことを考える時間が必要だ。


要するに個人的なテーマ「夢を追う」ことと、サッカー的なテーマ「サポーターとしての生き方」の2つが迷子になっているため、ぼくの文章も冴えないという結論となった。

結論が出ないのは恥じることではなく、様々な事象にあたるなかで、作業仮説を組み立て、検証していくことを通じて、真理、あるいは、魅力的なテーマを見つけていくことが大切だ。

一方「夢」については、力尽くでも新しいものを見出していくのもいいかもしれない。

というわけで考えたのは、「髭を剃る毎日」という夢。自宅でずっと仕事をしてると気付くと無精髭になってるからね。

一生を賭ける大テーマとしての夢も大事だが、日常的な小テーマとしての夢もあってもいいんじゃないだろうか。一生のうちに何度夢が叶うか。細かく刻むのもありっちゃありだ。


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