東大に11年在籍した後、タクシードライバーになりました

はとのす 

はとのすワーク 信念 書くことについて

2014年を振り返って、整理して、まとめて来年に繋げる。

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年末の大掃除をしていた。

昨年はまともに掃除が出来なかった。天皇杯やら高校サッカーを観戦していたこともあるし、初観戦からの一連の騒動のせいで息をつく間もなかった。要するに疲れ切っていたのだ。

ぼくには多くの弱点・欠点があるが、バイタリティがやや不足しているのもその一つのようだ。365日フル稼働することはとてもじゃないが出来ない。

歩けば疲れて一日休みたくなる。
最近は、身体もポンコツになってきたようで、少し歩くと右足の腓腹筋が緊張し、踵に痛みが出てくる。

だから、あまり長距離を歩くことは出来なくなってしまった。だからといって乗り物に乗ればいいのかと思うとそうでもなくて、腰がすぐ硬くなっていく。高級な乗り物に乗る予算がないので、夜行バスに乗ってヘトヘトになることも多い。

ぼくは元来、口ばっかりで行動力がなくて、なんでもかんでもすぐ愚痴るようなバイタリティーの足りない引きこもり型根暗人間である。であるからして、今年は本当に頑張ったと胸を張ってもいいような気がする。

頑張ったといっても無理はしていない。

大掃除をしていたら、研究時代の遺産が数多く見つかった。美しい貝殻や自分の論文などを除いて多くは処分したが、その中に「大量の胃薬」が見つかった。

研究室のデスク、出張先、自宅、車の中などに胃薬を常において、いつでも飲めるようにしていたのだった。対人ストレス、紛らわせるための酒、この二つでぼくの胃腸はボロボロだった。

逆流性食道炎、胃炎、腸も常に不調だった。そうなると精神も不調になっていく。

ふー、あの時に比べると、ずっと人生が楽になってきた。家族を抱えて、フリーランスの作家という不安定かつ低収入という最悪の職種についていたとしても、あの時よりはずっといい。2度と研究をしたいとは思わない。

一方で、あの時に手にした技能を使って、今は文筆業をしている。

やればやるほど、自分のバックグラウンドにはサイエンスがあることに気付かされる。「妄想」ではなく「推察」となるように、理屈を調整する癖がついている。

どこをどう調整すれば人を納得させられるかも知った。どちらかというと意地が悪く、嫌なことを何でもかんでもぶつけてくる(あるいは時にそれを人格に結びつけてくる)相手に対して論じ続けた経験は生きている。

いざ広い海に出てみると、プレゼンテーション能力にも絶対の自信を持ってもいいと気付いた。

研究時代に身につけた「技能」や「習慣」と、30歳を超えても決して枯れないように大事に大事にしてきた「感性」が結びついたとき、初めて文筆業として闘っていけるだけの武器が揃った。

文章とは人生だ。
文才などという正体不明の能力は必要ないのである。

さて、今年達成したことと、達成出来なかったことを整理したい。

達成したこと

【達成その1.書籍の出版】

第一に来るのはこれ。
『サポーターをめぐる冒険』の出版!!

サンプリングが約3ヶ月、執筆期間が約3ヶ月、製作期間が約1ヶ月。本を一冊書き上げるのがいかに大変なことなのかがよくわかった。

簡単に書き上げる方法もあるだろうが、論文を書くのと同じくらい厳密に書こうと思ったため、本当に……本当に大変だった。
10回以上校正入れて、これだけ苦労したのに、選手名やクラブ名にミスがあったことが後で発覚して,深く落胆してしまった。

せっかくこんなに頑張ったのに…… 台無しになってしまった……

出版後、「面白かった」というようなポジティブなコメントよりも、「ミスがあった」という報告ばっかり来ると心情的にかなりこたえる。

「買いました。面白かったです。ミスが2つありました」という感想を結構もらった。それは有り難いといえば有り難いのだけど、読んでも全く嬉しい気持ちにならない。

サッカー出版界の大御所(?)東邦出版の中林さんは「本は出してからのほうが大変」というようなことを言っていたが、その通りだった。

※中林さんも、印刷してから大ポカしたことに気付いて刷り直す羽目になったことがあったとか。詳しくはこちらに掲載されている。

本をPRするのも、売るのも、ミスはミスと認めて謝罪するのも本当に大変だった。インターネットには謝罪を求める人がたくさん集まっている。誤植などはこちら側のミスなのでその人が何であれ謝罪することになる。理不尽だと思った場合は相手にしないけど。

マス相手に発信するようになると、反響もマスになってくるため、必然的に人の悪意に触れる機会が増えてくる。

とはいえ、作家になるという夢を叶えた上で、夢のステージで闘っているわけなので、一切の不満はない。ぼくはこの大変さと一生付き合っていかなければいけないが、一生付き合っていくことが出来るのだ。これほど嬉しいこともない。

そして、高く評価してくれる人も大勢いる。
それだけ、ぼくの書いた文章に価値があったのだと自負してもいいだろう。

自分を信じ、自分の書くものの価値を信じ、それを受け取ってくれる人のことも信じよう。

大きくなればなるほど、「論難者」が増えてくるのも間違いないが、正しい表現が出来ていれば味方の数はもっと増えているはずだ。

例えば、アマゾンレビューにこの間初めて1がついたのだが、記述はこんな感じ。
Amazon.co.jp: カスタマーレビュー: サポーターをめぐる冒険 Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった

誤字をそのまま引用して(原文ママ)とした意地の悪さが見られる反面、ブログ記事の内容もチェックし、恐らく書籍も最後まで読んでいるという意味で、正統たる批判者と言える。

「サッカーってよくわからないんだよね」と言っている潜在的なサッカーファンまで届くことです。この本を切っ掛けに、第二次Jリーグブームを起こすという気合いを入れて書きました。」とありましたが,そこには到底達していない

これが1という評価になった最大の理由と想定されるが、これは確かにその通り。
もっと広い世界に呼びかける文章を書いたつもりであったが、狭いサッカーサポーターコミュニティにしか届いていないというのは、耳が痛いが事実なのである。

ぼくはJリーグは面白いと1年間付き合ってみた上で断言出来るし、多くの人にとってJリーグとの出会いは幸福に繋がっていくと考えている。だから、Jリーグの良いところをもっと語っていきたい。しかし、『サポーターをめぐる冒険』だけでは、伝わりきらない。

続刊以降では、サッカーファン以外にもどうやって届けていくかについて考えて行く必要があるなと確認した次第だ。

ぼくは、1と5の評が多い本を書くべきだと思っている。3ばっかり集まっても、それは「誰にとってもどうでもいい本」であるというだけなのだ。ある人には深く刺さり、ある人は「俺には全くわからない!」と怒るくらいでいいと思っている。

本当に価値がある文章は、誰にとっても有益なものではない。時には毒物でもあるのだ。

【達成その2 良い本が書けた】

1冊目の本は、良い本にしなければならない。
大ヒットする必要はない。良い本であればいい。

その意味では、『サポーターをめぐる冒険』に関しては成功したと断じていい。

サッカー観戦記に、自分の人生を織り込んでいくというビッグチャレンジに成功したため、続刊以降の道がメリメリと音を立てて切り拓くことが出来た。

セールスは、決して途切れることなく続いているという意味ではポジティブだが、伸び悩んでいるとも言える。それは、全国津々浦々の書店に置いてもらうという状態には至っていないからだ。

このへんは、出版社と一緒に何とかしないといけないのだが…… 良い本を書いていけばいずれ何とかなるだろう。

さらっと通過して忘れられてしまうような本ではなく、何度も読み返されたり、人に語られたりするような本を書いていけば、作家は絶対に孤独にはならない。

営業上の努力も大切なのだが、まずは書くことだ。魂を込めて文章を書く。そうすることで世界を切り拓く、それが作家の道というものだ。

【達成その3. 作家という肩書き】

本を出したことに準じるが、堂々と「作家」と名乗れるようになった。これは正直ちょっと照れる。しかし、「作家」と名乗る時に恥ずかしがってはいけない。紹介してもらった時もそうだ。

それは、自分の作品の価値を貶めることに繋がるし、自分のことを高く評価してくれる人の「尊厳」を否定することになるからだ。堂々としていればいい。

と、同時に、別の部分で身を引き締め、謙虚になればいい。

【達成その4.講演会を行う】

実はずっとやりたかったのが講演会。
本を書くのと同じくらいやりたかった。

執筆が辛いときは講演会をする日のことを想像して、何とか踏ん張った。念願叶って月1ペースで出演することが出来た。

6月 出版記念 with ロック総統の乱入あり
7月 出版記念2 with 窪咲子
8月 応援論 自然発生型vsコアサポ型
9月 W杯サポーター大反省会でプチプレゼン
10月 Ammo.「Lucifer」 舞台のアフタートークに出演
11月 経営者向けのセミナーにて講演
12月 KITEN大忘年会に出演

一番無理なく出来たのが経営者向けのセミナー。真面目でオフィシャルなプレゼンテーションは、大得意だ(とはいえ、テーマ自体はもっと掘り下げる必要がある)。

難しかったのはやはりエンターテイメント系。これは、客層やニーズを手探りしながら、トークを組み立てていくという結構高度な技能が必要になる。

特に難しかったのはロック総統との掛け合い。あのおじさんは人類最強だ。割と本気で革命家だと思っている。来年は錦糸町フットボール義勇軍に殴り込みをかけたい。

いつかラジオに出演するという野望もあるので(今出てもあんまり喋ることないけど)、もう少し発声とか滑舌を良くしないといけない。がんばろっと。

【達成その5. ブラジルW杯に行った】

旅はあまり得意ではない。

海外旅行はオーストラリアへの卒業旅行、ハワイ旅行、オーストラリアでの国際学会に続いて4回目。海外への一人旅の経験はなし。

そんな状態で、ブラジルに1ヶ月滞在していた。半分くらいは一人で行動するというのは、初めは無茶だと思っていた。準備に丸々一ヶ月以上かかったし、後始末も大変だった。

しかし、紛れもなくブラジルはぼくを変えてくれた。1ヶ月間ずっといるというスケール感も良かった。本当に行って良かった。

この時のことを何が何でも本にしたいという気持ちになっている。「負けたから売れない」というのは一つの事実だろうと思う。「ブラジルW杯」はどう考えてもビッグヒットするようなテーマではない。しかし、日本サッカーのため、あるいはスポーツ文化のために、書き記しておくべきことは山ほどある。

この本を、この時流で出版しようと思う会社はあまりないと思うから、そこから探さないといけないのでなかなかしんどいのだが、まずは時間を作って良い原稿を書くことから始めなければ。

【達成その6. 仲間が激増した】

主に、ブラジルに行ったことと、書籍を出版したことにより、友人・知人の類いが爆発的に増えた。

何のかんので知っている人と「懐かしいねー」とか言い合ってるのは人生でも一番幸せな時間の一つなんだから、多くの「知ってる人」が増えるのは幸福なことだ。

そのうちの何人、あるいは何十人かは、生涯の仲間になるかもしれない。こんなに嬉しいことはない!

反省すること

【反省その1 お金がない!】

今はこれにつきる。

本を出すこととブラジルに行くことが重すぎて、普通の文筆業をこなすことが出来なかった。かといって、副業的に何かをすることもうまく出来なかった。

もう少し収入が入らないことには、作家業を続けていくことが困難になってしまう。一方で、現金こそないが コンテンツは手放していないため、財産は確実に増えて行っていという見方もある。

一記事を数千円で売り歩いていっても、いつかどこかでパンクする。その瞬間に財産なし、収入なしになってしまう。それは本当に恐ろしいことだ。『サポーターをめぐる冒険』は、著作権は自分で持っているし、今後売れ続けていけば印税も入ってくる。一方で、著作権ごと売り渡してしまうようなやり方だと、その時の収入がつきたらおしまいだ。

大雑把に言うと、ぼくのやり口は「リジェネ」でチマチマ回復していくやり方。「ケアルガ」を単発で使うようなやり方ではない。わからない人はすみません。ゲームでこういうやり口が好きだし、フリーランスは性格出るね。

マネーをどうするかが2015年の大きな課題となるのは間違いない。
直木賞を取ろうが、何とか新人賞を取ろうが、作家として一生食っていけるわけじゃない。

作家になるのは簡単ではないが、そこまでなら多くの人の手が届くのだ。もう一つ、もう二つと手を伸ばしていかないといけない。

食えて初めてプロ作家。これにこだわっていきたい。

【反省その2 インプットが足りない】

サッカー観戦は45試合とまぁまぁ。FC東京戦があまり観れなかったのは不満だが……もはやFC東京戦は仕事ではなく個人の楽しみなので、他の試合に行く「仕事」と競合してしまう。ここは難しいところ。

とまれ、試合観戦はまぁまぁ出来た。しかし、それ以外のインプットは限定的であった。

サッカー本も10冊読んでいないだろうし、一般書籍も20冊くらいなのではないだろうか。来年はインプットをもう少し増やしていくことに注力したい。これは、目先の文章に使うものではなく、5年後、10年後により深い文章が書けるになることを目的としたインプットだ。

ぼくの表現したい内容を完遂するためには、いくつかのジャンルをもう少し深く追求する必要がある。

【反省その3 ブログがうまく使えなかった】

2013年、ぼくの運命を変えた記事を何本も産み出した「はとのす」であるが、2014年に関してはヒット記事が非常に少なかった。ジャイアントキリング記事がぶっちぎりで1位であるが、それ以外は心許ない(「GIANT KILLING」が神の領域に入りつつあるようだ。 | はとのす

今年は、精神的な安定を重視したので、流行のきな臭いネタにもあまり触れることがなかった。きな臭いネタに突っ込んでいくのがブロガーとしては王道なのだが、今年に関してはそれだけの余裕がなかったのだ。

せっかくのブラジルワールドカップもブログのネタとしては活かせないまま終わってしまった。

最も途中で文章化することにこだわりすぎると、不都合も生じる。何かを体験しているときに、後に文章化することを意識してはならない。体験は体験として純度を高め、後に振り返って整理するという形が望ましい。

そうしないと「記事を書く都合」に左右され、体験にバイアスがかかってしまう。もちろん、それは100%防ぐことは出来ないことではあるが、可能な限り抑え込む必要がある。

そういう意味では、現地で書いた記事よりも、半年経った今書く記事のほうがより優れたものになる可能性がある。というよりも、確実にそうなるはずだし、そうならないと価値がない。

書籍作家として活動していく中で、ブログをどうやって使っていくかは検討事項。

【反省その4 文章にする速度が遅い】

体験した直後に文章を書くよりも、少し寝かせてから書いたほうがメリハリの効いた良い文章になりやすい。というのは事実なのだが、間を空けすぎると、次の体験が入り込んでくるので混乱してしまう。

ずっと自分の中で練っておきたいと思ってしまう気持ちをうまくコントロールして文章を書いていくしかないだろう。

【反省その5 休みがうまく取れなかった】

休まないといずれうまくいかなくなる。
自分で言うのも変な話ではあるが、ぼくは比較的繊細な芸術家タイプなので、ああ、疲れたなと思った時はちゃんと休みを取らないとうまく回らなくなってしまう。

文章は、内職の風車とは違って、自分をかけた分だけ作れるものではないのだ。

余暇を取りつつ、精力的な活動をし、資金を稼ぎ、新たに取材に行ったり、将来のために投資をしたり、子育てをしたりする。

今年は夢の舞台にあがって、アップアップになっていたが、来年はしっかりとやっていきたい。


以上、中村慎太郎の2014年を振り返ってみました。

大雑把に言うと
1~5月 『サポーターをめぐる冒険』執筆
6~8月 ブラジル準備、ブラジル、後片付け
9~12月 体調不良&続刊のためのサンプリング

これで一年が終わりました。

来年は、読者に届ける文章の量を増やしたいと思っています。それが全てに繋がっていくはずです。
お楽しみに!!!

P.S.
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