この度、「第二回サッカー本大賞」を受賞したことを報告致します!!!
サッカー本大賞2015、決定!!
【サッカー本大賞2015 大賞】
「サポーターをめぐる冒険」 中村慎太郎著 ころから刊 pic.twitter.com/sPEpc7F1ui
— サッカー本大賞 (@soccerbookaward) 2015, 2月 11
セレモニーの様子などは、公式のレポートが上がってくるようなのであまり詳しくは書きません。著者の所感としては、「ノミネートして頂いたことは大変ありがたいけど、大賞は厳しいであろう」というものでした。それだけ印象的な作品が並んでいたと思います。
今回の選考では、『通訳日記』を超えられるか、が一つの大きなテーマになったようです。
『通訳日記』は日本サッカー史における非常に重要な作品です。ブラジルワールドカップでの敗退以降、「ザックジャパンは全然だめだったね」という方向に世論が大きく傾いていたのを一気に押し戻し、同時に、サッカーファンの中に蓄積していた「やるせなさ」を晴らしてくれた作品でもあります。
まだ途中ですが『通訳日記』は読んでいるところです。ザッケローニ監督がどれだけ真摯に日本サッカーのために動いてきたのかを、この世で最もよく知る矢野さんが自分の言葉で丁寧に伝えてくれています。
ザックジャパンが思ったような「結果」を出せなかったことについて非難する人がいるのもわからなくもないですが、同時に「過程」は間違っていなかったのかどうかについても、この『通訳日記』で検討していくことを強くお勧めしたいです。
表彰されるときに矢野大輔さんと隣に立ったとき、笑顔で「おめでとうございます!」と言って頂きました。
「矢野さん!『通訳日記』読ませて頂いております。ぼくはザッケローニ監督が大好きで、ワールドカップでも現地にいって応援して……結果が出なかったので叩かれることになってしまいましたが、『通訳日記』のおかげでザッケローニ監督が間違っていなかったということがわかって本当にうれしかったです!!!」
とまくし立てるように早口で伝えました。その後、インタビューなどを受けているうちに矢野さんを見失ってしまいました。サポーターの気持ちは伝わったでしょうか……
『通訳日記』を超えられるかというテーマについて、作品自体の内容で超えたとは全く思っていません。それは、ザックジャパンの通訳を4年間やった記録と、新人作家がサッカー観戦した記録では、差があるのは当然のことです。
にも関わらず今回大賞を頂けたのは、サッカーが行われている現場に赴き、その熱を感じ取っていくこと、Jリーグを盛り上げていくことに対して、強力なエールを頂いたということではないかと思っています。
『サポーターをめぐる冒険』は、著者の個人的な日誌であると同時に、多くのサポーターの熱と愛情に突き動かされて書いたものです。「自分が書いている」と「誰かに書かされている」のあわいにある作品といえるかもしれません。
そういう意味で、今回評価されたのはぼく個人ではなく、日本のサッカーを支えてきた「サポーター」という存在です。すなわち、これこそが、今まで脚光を浴びていなかった「サポーター」という存在に、ライトがあたった瞬間といえるかもしれません。
サッカーの試合を、「興業」と考えた場合、第一義として重要なのは試合そのものであることは間違いありません。と、同時に、第二義として非常に重要なのが「押し寄せる観客の熱」です。テレビ中継などを通じて注目されていたとしても、無観客試合の寒々とした雰囲気はもうご免だ、というのが我々サポーター数少ない共通認識の一つです。
あの無観客試合は、スタジアムに押し寄せるサポーターという存在がいかに重要であるかも同時に知らしめたように思います。
今回、選考は非常に難航したようです。その中で賞を頂けた最大の理由は、もしかしたら審査委員長がボソっと呟いた「なんか一番喜びそうだったから」というのが正解なのかもしれません。
そして、喜ぶ理由としては、『フットボール批評 issue.02』に掲載されていたこのやりとりに秘密がありそうです。
大武「(略)そういうサポーターになっていく瞬間を描いたものは他にはなくて新鮮でしたね。」
大武「(文筆業では)食えないとかお金がないとか、ツイッターでよく呟いているんですけどね(笑)。」
速水「本を出せば出す程、食えなくなるに決まっているじゃないですか(笑)。」
「批評」誌上で、財政事情について論評されたのは、サッカークラブとサッカー選手以外ではぼくだけに違いない!!
今回賞を頂いたことは、作家業をしていく上では、これ以上ないほどありがたいことです。本を書いて売るという仕事は非常に効率が悪く、サラサラっと書いて大金が得られるというような職種ではありません(そういう人もいるかもしれませんが)。週3でコンビニのアルバイトをしている程度の収入を得るだけでも大成功と言えるくらいです(直木賞作家でもそういう人がいるくらいです)。
特にぼくの場合は、現地までの交通費やらチケット代やら宿泊費やらはすべて自腹を切っているので、非常に苦しいところです。この前計算したら、数十万円単位の膨大な額の赤字が出ていました。でも、そうやって自分のお金を使いながら、頭を使ったり、仲間と協力しながら、あれこれと工夫していくのがサポーターの醍醐味です。そこを外すと、サポーター本など決して書けません。
現地観戦派であるぼくに対して「えせサポーター」であるという人には出会ったことはありません。しかし、「にわかサポーター」であることは間違いありません。にも関わらず、わずか1年強の期間に、たくさんの友人に恵まれました。このたびの受賞でも、共に観戦し、共に旅をし、共に酒を飲んだサッカー仲間たちが我がことのように喜んでくれました。これが何よりも嬉しかったことです。
授賞式の会場でもこんなことがありました。
大賞を頂いて、しどろもどろの挨拶をした後、席に戻ろうとすると……目の前からアルビレックス新潟の美人サポーターが突然舞い降りてきて、花束を渡してくれました!! わざわざ来てくれた上に、無駄になるかもしれない花束まで用意してくれるなんて!!
驚いて一瞬戸惑いましたが、その後目の奥がじんわりと……
『サポーターをめぐる冒険』を出版したことで、作家になるという夢を叶えることは出来ましたが、今は「作家として生きていく」ことに悪戦苦闘をしています。書いているだけでは収入が乏しいので、作家活動を大きく減らして、パートタイムで働くことも検討してきたわけですが、今回の受賞を切っ掛けに、「作家活動の効率性」が若干改善されるのではないかと思います。平たく言うと、より多くの人に関心を持って頂けるようになるということです。
これはすなわち、「おまえはもっと書け!!」という励まし、あるいは叱咤を頂いたこととほぼ同義だと思います。
書いたものを読んでもらえる可能性が、飛躍的に高まったことは間違いありません。これは書いて、書いて、書きまくるしかないですね!!
というわけで……
ついでながら、執筆中の次回作について簡単に紹介させて頂こうと思います。
『サポーターをめぐる冒険』の続編その1とその2。あるいはブラジルワールドカップ本。
サポーター達に突き動かされてJリーグ界を放浪する「ぼくの物語」が『サポーターをめぐる冒険』です。しかし、お読み頂いた方はわかると思いますが、その物語は一段落しています。二作目以降は、主役を「ぼく」から「各クラブのサポーター」に移した「誰かの物語」を綴っています。
といっても、インタビューをして回ったような内容ではなくて、一観客として全国のスタジアムをめぐりながら、そこで出会った人のことをスケッチしています。これは自分のこと以上に書くのが大変で、執筆が大変難航していますが、この流れに乗って勢いをつけて書いてしまおうと思います!!
書いてから相談しないといけないので確定ではありませんが、ラインナップはこんな感じにしようと思っています。
サポーター本 その1
1.某試合(掲載するかどうか未定)
2.大阪ダービー@ヤンマー
3.京都vs山形@西京極
4.某試合(未定)
5.神戸vs甲府@ノエビアスタ
6.鳥取vs琉球@とりスタ
7.甲府vs柏@中銀スタ
8.某試合(未定)
9.某試合(未定)
10.松本山雅vs札幌@アルウィン
サポーター本 その2
1.スルガ銀行杯(未定)
2.琉球vs藤枝@沖縄市陸(コザ)
3.相模原vs町田@ギオンス
4.新潟vs鹿島@ビッグスワン(デンカS)
5.ナビスコ決勝 ガンバ大阪vs広島@埼スタ(未定)
6.某試合(未定)
7.ブラサカ世界選手権(未定)
8.長野vsYS横浜@長野
9.セレッソ大阪vs鹿島@ヤンマー
10.磐田vs山形@ヤマハ
11.讃岐vs長野@丸亀
12.チャリティーマッチ(未定)
ブラジル本
何もかもが未定!出版できるどうかも未定!
ぼくのブログやSNSなどをご覧頂くと、いかに書くことに苦しんでいるかがよくわかると思います。なるだけ書かないようにしているのですが、それでも書きたくなるほど、執筆業は大変です。
言いたいことを全部文章にするのは、時間的にも労力的にも難しいので、いっそのこと「喋り」のチャンネルを作ってしまおうかということで、ポッドキャスト企画も水面下で進めています。※ポッドキャストは、ダウンロードして好きな時に聞けるタイプのネットラジオのようなもの
今後どういった活動をしていくかは、本人すらもよくわかっていない糸の切れた凧状態ではありますが、少しでも皆様に楽しんで頂けるよう精進したいと思います。
これまで支え、応援してくださった皆様ありがとうございました!! これからもどうぞよろしくお願い致します!!
(そして、各所から「太ったね」という指摘が矢のように飛んでくる……確かに太った。お腹もポニョ化しつつある……や、せ、な、い、と!!)
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