月刊はとのす 2013年10月号


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「月刊はとのす」では、前月の投稿をランク付けし、裏話と猫動画と共に紹介している。

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10月は、とんでもないことが起こった。

8月に翻訳関係や細かいライターの仕事を全部辞めた。こういった細々とした仕事を続けていても永久に作家にはなれないと考えたからだ。そして9月からは、細々と「はとのす」を更新する毎日が続いていた。

ブログを更新しているだけの状態というのは、ほとんど「無職」と変わらないわけで、精神的にも結構なキツさがある。それでも、書き続けるしかない。

今後の人生で自分がやりたいものを書いていくためには、媒体がブログだろうが何だろうが、自分が良いと思うものを書き通すしかない。

心のチャンネルをオープンにして、目の前に出会ったものを感じ取り、その感覚を丁寧に文章にしていく。背伸びをせずに、自然体で書く。誰かに上に立ったり、何かを見下したり、自分を良く見せようとしたりする気持ちを必死で抑えつけて殺していく。

文章を書いている人には特有の病気があって、それは「俺はこんなに文章がうまいし、言葉を知ってるんだぜ」と自慢したくなるものだ。

「始めてJリーグを見たら、これがとても面白かった!!!」

と書けばいいのに、文章の上手さを示そうという気持ちが強くなってしまうとこういう風になってしまう。

「Jリーグは巨大な毛筆の如きものに姿を変えて、我が心を擽り続けた」

(酷い文章だね)

文語調だったり、擽る(くすぐる)だったり、日常的に使わないものを持ってくるのは自己満足だ。虚栄心だ。未熟な心だ。

ぼくもすぐ「カントが躓きの石を唱えたように」とか書きたくなってしまうんだけど、こういうのは全部直さないといけない。「博識でかっこいいぼく」なんてものを自慢したい気持ちが少しでもあったら、文章は曇っていく。

心が感じたものを、そのまま文章に直すことができなくなってしまう。

物書きと名乗りつつも実際のところは無職状態の今は、名前が売れたり読んでくれる人が増えたりするのはとても嬉しいことだ。それが将来的には仕事に繋がっていくかもしれない。

しかし、売れ始めと考えて調子に乗るような未熟な心の持ち主は物書きとしては二流だ。強く戒める必要がある。物書きは、書く職人であってセールスマンではない。と、同時に、3回目となる「月刊はとのす」という企画では、10月の大成果を報告しないといけない。

今月は、1位から紹介したい。

ベストオブはとのす 2013年10月 1~3位

1位 Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった。 100615PV(ページビュー)

気まぐれで書いた「初観戦記」が、書いて1時間でYahoo buzzに載ったり、アシシさん(@4JPN)やUGさん(@soccerugfilez)などの拡散能力の高い人のTwitterで紹介してもらったりしているうちに……

サーバーが落ちた

30人で悲鳴をあげているようなサーバーに500人が殺到したら、そりゃ無理だ。サーバーが可愛そうなくらいだ。

上記のPV数は100615となっているが、これはGoogle analyticsの数値で、サーバーにあるプログラムでは約15万を記録している。5万の誤差は、サーバーが半分落ちている状態でのアクセスが多かったことに由来している。

サーバーが重いときは、Googleにはカウントされなかったらしい。

FOOTBALL STATION -全てのサッカーニュースを此処に-というサイトで紹介してもらった時に、「はとのす」の表示位置が場違いで噴いた。

日本代表、松木安太郎、はとのす、メッシ、セルジオ越後。横には、前園、柿谷、オシム、本田。どういう並びなんだ。

週単位でPVを見てみると面白い。はとのすの歴史上、いかに大事件だったかがわかる。10月以前はまるで何もしていなかったかのようだ。

この文章を書いた時の気持ちとしては「サッカーで書いていくのは無理だからやめよう」だった。サッカーのプロになろうと思う人は、「実はJリーグ初観戦なんです……」なんて絶対に書けない。

物書きは博識であることが存在意義だと思っている人も多いし、実際に自分の「専門領域」を作って、その領域の仕事を取ってくるのが定石と言っていい(そういう意味では、ぼくは専門性が乏しいので物書きとしてはとても弱い)。

素人くさい初観戦記を残してしまうということは、今後サッカー関係の仕事は来ないということを覚悟する必要がある。32歳になって初めてJリーグをみた素人に、一体誰がマッチレビューを書かせたり、選手の取材をやらせたりしようと思うだろうか。

と思って書いたのだが、文章自体は極めて真面目に書いた。サッカーのことを書ける機会は少ないし、仕事では出来ないかもしれない。ならば、せめて少ない機会に全力を尽くそうと思った。

また、「はとのす」の読者はバスケ関係の人が多かったため、サッカー記事は読んでもらえないことが多かった。だから、タイトルをなるだけキャッチーにしようと考えて、コピーライティングをした。それが良かったらしい。仕事にできる見通しはないものの、今はJリーグのことばかりを考える毎日が続く。とても充実している。楽しい。

人生はなんだかわからないものだ。

サッカーのことを書けば多くの人の目に触れる。物書きにとってはこれ以上に嬉しいことはない。しかし、欲を出したり、調子に乗ったりしてしまっては、ぼくの書きたいものは書けなくなっていくかもしれない。

なかなか恐ろしい。無職に近いフリーだから何も保証されていないし、1ヶ月後に自分が何をやっているのかすらもわからない。

どっどどどどうど どどうど どどう どっどどどどう どどどうど どどう

ともかく、この「初観戦記」が、仕事上で良い効果をもたらしたということは今のところないのだけど、ぼくの人生を変えるには十分だった。

Jリーグの良さに触れて、それを記した。すると、とんでもない数のリアクションが返ってきた。「Jリーグのことをよく書いてくれてありがとう」という感謝の気持ちがほとんどだった。驚きだ。

普通、ネットにコメントをする人は、ネガティブなことを書く。まぁまぁいいなと思った人は何も書かない。コメントをしようと思うのは、余程突き抜けて良いものに触れた時だけだ。

何がどう突き抜けたのかはわからないが、ともかく「はとのす」は突き抜けた。しかし、一発で終わってしまったら、ダンディ板野だ。鳥人だ。有吉にはなれない。マツコやアイドルと一緒に番組に出ることもできない。

2発目のプレッシャーに苦悩する日々が続くことになった。

2、3位「2回目のJリーグ観戦に行ったら、恐ろしいことになった。 前半後半 
前半 20934PV 後半 26284PV

大ヒットの次に何を書けばいいのか。これはとても難しい。物書きのプライドをかけてここでコケるわけにはいかない。しかし、どうすればいいのか。

ともかく、スタジアムに行くことにした。先約を急遽キャンセルさせてもらい、味の素スタジアムへと乗り込んだ。もし楽しめなかったら、今後Jリーグのことを書かなければ良い。楽しかったならば、精一杯書くまでだ。

で、幸か不幸かとても楽しかった。

さて、どうやって書くか…… 万単位の人に読まれる可能性があると思うと身が引き締まる。変なことを書いてしまったら、袋だたきにされるかもしれない。

考え続けた結果、記事の内容は決まった。しかし、前回のヒットを受けるものとしては不十分だった。

そういう時は自分と向き合うしかない。自分の心が感じた順序で物事を書いていく。心が強く感じたものを強く書いていく。

結果は、前半と後半ともに2万超えの大ヒット!!二部に分けないほうが良かったのは重々承知なのだが、書くことが多くなりすぎてしまったため泣く泣く分けた。

もう少し短く書くべきだったのだが、Jリーグを1日観に行くだけで楽しめるものが多すぎたせいだ。Jリーグが面白すぎるのが悪いのだ。その魅力は何なのかを考え続けた結果、この二部作は併せて15000字以上の大作になってしまった。

ブログにこんな長い文章を載せるのはクレイジーだと我ながら思う。1000~2000字くらいが定石だし、人によっては600字くらいで切る。どんなに長いものでも4000字くらいだ。それ以上は読まれないし、効率が悪い。

長い文章を書くにはブログというメディアはあまりあっていない。ウェッッブ閲覧に合わせた表現をしなければいけないので、文章の区切り方や言葉の使い方などに制限がある。そのため、自分らしい文章が書けたかというとそういう感じはしないのだが、ともかく2発目をしっかり撃てたという意味では満足だ。

ほっとした。

1発目のまぐれ当たりは別として、2発目をしっかり書けたのは良かった。多くの人が期待した通りに書く。しかも、前よりも面白く書く。自分を出さねば記事にならないが、自分を出し過ぎると失敗する。綱渡りみたいなものだ。

ふー。

こういう書き手も読み手も疲れる文章は、あくまでも“劇場版”で、普段はもう少しゆるく書いていきたい。

10月の猫

今月も子猫時代。「うれしくて、うれしくて、うれしい」状態とはこういう猫みたいな感じなんだろうと思う。

10月の注目記事

最近書いた記事で「初観戦記」の前提になっていると思うものがいくつかあるので、紹介させて頂きたい。

「センスは10年」 風立ちぬに込められた真のメッセージ

「気の利いた文章を書く」とか「自分を認めさせる」ではなくて、「創造的な人生の持ち時間は10年しかない」と考えるようになってから前よりも文章に向き合えるようになった。

良いことを言おうとしないほうが良いことが言えるようだ。

また、この作品の主人公堀越次郎役の声優を務めた庵野氏はとにかく下手だ。でも、それがいい。技術が高ければ伝わるというものではないのだ。大切なのは精神だ。

批判記事は容易だが、賞賛記事は難しい。

何かを貶めるようなことのほうが書きやすい。悪く言うのはとても簡単だ。しかし、良く書くのは難しい。とても難しい。
でも、そういうものが書いていきたいという決意の文章。ただしこの文章自体はあんまり上手にまとまっていない。

書くべきことは芸術-ART-のステージか

これも文章自体はあんまり良くないので読んで欲しいかというと微妙なのだけど、今自分が向き合っている問題が書いてある。情報を整理するには博識である必要があるが、ぼくは博識にはなれない。マニアックに知識を追求したいというタイプではないのだ。

でも、物書きとして生きて行きたい。ぼくに出来るのは、情報ー知識ー知恵というラインとは全く別のものだろうと気付いた。人間や人間活動を感じて、それを表現する。大袈裟に言うとぼくの文章は一種の芸術活動なのだ。

もちろん、自分でどう考えているかと、人がどう受け取るかは別の話だ。

ピカソの絵が落書きレベルだと思う人もいるし、素人が作ったゴミくずみたいな粘土細工を奇跡の作品だと感じる人もいる。

100 m走でオールアウトするような生き方=書き方

そして、運動会でリレーを走ったことが、「全力で貫く」という迫力を生み出してくれた。

何でも挑戦してみるものだ。すべてのものは繋がっている。無駄な経験などない。全力でやれば必ず道は切り開ける。

ワーストオブはとのす 2013年10月

歴史に残る名ゲーム 日本Xイタリア コンフェデレーションズカップ2013

ぼくがいかにサッカーのことが書けなかったかがよくわかる文章。本気でクオリティの低いものは非公開にしてしまっているので、これでもまだマシなほうなんだけどね。お恥ずかしい……

当時はザッケローニに対して絶大な信頼をしていたのだが、清水英斗さんの新作を読んでいたら、ちょっと甘かったかなとも思うようになった。この本は、すごいタイトルだと思っていたら、サッカー本コーナーでは一際目立っていた。

ぼくが読んだ日本代表の分析の中で一番しっくりくるものだった。こういう人がいるから、自分では分析をしようという気には全くなれない。著者に面識があるのでよくわかるが、この人の思考はとてもクリアで、とても伝わりやすい。

上述したような「俺すごいんだぜ」という自慢したい気持ちが全然なくて、ただ単純にサッカーのことを考えるのが大好きなだけというのが伝わってくる。

ぼくの書いた分析と比較するようなことは絶対にしてはいけない。絶対に……

ベストオブはとのす 2013年10月 4,5位

4位 Jリーグ初観戦記のこぼれ話 9171PV

初観戦記や2回目の観戦記よりもこっちのほうがはるかに自然なトーンで書いてある(特に2回目よりは)。書いているときに涙が溢れてきた。泣きながら書いていた文章には何か力が宿るのか、これを読んで泣いた人もいたようで…… 

「はとのす」は、徳光さんみたいになってきた。

5位  20年越しのカシマサッカースタジアム 3933PV

昨日書いたばかりなのでもう少し数字は伸びそう。
“劇場版”よりリラックスして読んでもらえるように、こちらもリラックスして書いた。

基本的にはこのレベルの緩さでブログは書いていきたい。だって、疲れちゃうからね。

「うれしくて、うれしくて、うれしい」というフレーズは3日くらい考えていたら思いついた。「餌をもらうときのイルカみたいに嬉しそう」を採用しなくて良かったと思う。クカカカカ。

10月のオススメ図書

幻のサッカー王国 宇都宮徹壱

10月に書評を書いたものの中で一番オススメなのは、宇都宮徹一さんの処女作。ぼくのブログを見て、文章がうまいとか、感性が豊かだとか言っている人は(本当にありがとうございます!)、是非この本を読んで欲しい。

ぼくが見たのはJリーグだったけど、30歳頃の宇都宮さんが見たのは旧ユーゴスラビアのサッカーリーグだった。サッカーマニアが楽しめるのはもちろん、サッカーがわからない人ですら紀行文として楽しめる。オシムとストイコビッチくらいしかわからない自分でも十分すぎるほど楽しめた。

文章も写真も素晴らしく、若き宇都宮さんの初々しい感じが伝わってくる。この本を書いた人があんな風に立派で格好いい感じになるというのは、最高に格好が良い人生の送り方をした結果なんだろうという感慨を覚えた。

いじわるに生きた人はいじわるな年の取り方をする。優しくかっこよく生きた人は、優しくかっこいい年の取り方をする。ぼくもこれから「年の取り方大喜利」に巻き込まれていく。

優しく強い大人になりたい。

夢に向かって

作家になるという夢に関して、9月号を書いた時は何も始まっていなかった。10月になって「注目される」という意味では一歩進んだかもしれない。誰も見ないリングでプロレスをしていても仕方がない。少なくともリングを覗きに来る人は多くなった。

しかし、本を出すという目標については何も進行していない。むしろ逆行している気がする。何の本を書くのかと言われても、「偏差値30からの東大受験」くらいしかネタがない。11月はこれの企画書を書いて出版社を回ろうと思っていたのだが、Jリーグで忙しいのでちょっと難しそうだ。

そもそも、文章力という意味でも、知識という意味でも実力が足りていない。もっと上があるし、努力を続けないといけない。最初の本を出すときがいつか来るとして、その時までにもっと向上しなければ。

ぼくがセンスを磨くための時間はまだ9年近く残っているし、ここまでに本を出すと決めたタイムリミットもあと1年4ヶ月ある。まだまだだ!!

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