仙台で天皇杯準々決勝を観戦した。
(天皇杯準々決勝にて、塩田仁史の情熱が東京を1つにした。)
その後、息をつく間もなく東京は阿佐ヶ谷に向かった。
イベントに出席することになっていたからだ。出席するといっても単に客席に座っているだけなのだが、どうしても気になったのでハードスケジュールの中でも行かないわけにはいかなかった。
(もっとも、仙台駅で牛タンを飲みながら一杯やりたいという誘惑を断ち切るのにはかなりの精神力が要求された)
会場はこちら。
- Asagaya / Loft A - since 2007.12.1 - 絶望から希望へ
阿佐ヶ谷の商店街の地下にある濃厚なイベントスペース。ここで行われたイベントには参加したことがあって、以下のようなレポートを書いた。
報告&感想:西部顕司「戦術リストランテⅡ出版記念トークイベント」サッカー戦術ナイト~出張リストランテ
はとのすが出来たばかりの文章なので、書き方が定まっていなくて、自分で書いたものではないようだ。とはいえ、ここで熱いサッカートークを聴いたことも、「Jリーグ初観戦記」への伏線になっている。
さて、この日のイベントはというと……
燃えろ!J2党 第10節 1stステージ
【出演】
ふくやん(アビスパ福岡サポーター)
初代かねやん(元阿佐ヶ谷ロフトA)
流石(FC岐阜サポーター)
龍星ひかる(東京ヴェルディサポーター)
【ゲスト】
吉崎エイジーニョ(サッカージャーナリスト)
能田達規(漫画家・愛媛FCマスコットデザイン)
さとるん(松本山雅サポーター「UM est」)
たけるん(FC町田ゼルビアサポーター「CURVA MACHIDA」)
くろっぷ(アビスパ福岡サポーター「盟主シールプロジェクト」運営)
中倉一志(スポーツライター・J'sGOAL福岡担当)
谷塚哲(REGISTA有限責任事業組合)
肩書きを見ると色々な人がいて面白い。このカオスな感じに惹かれてこの日は参加することに決めた。しかし、予告を見てもどういう話が出てくるのか全く分からない。パルプンテ的なイベントだなぁと思いつつ会場に入った。
第一部 謎の表彰式でちょっとイラっとする
入ると、カマタマーレ讃岐のユニフォームを着た人が立っていて、「カマータマーレ!」とやっていた。どうやら、今年J2に入ったチームには入学証書、J1に上がったチームには卒業証書、J3に入ったチームには入園証書を渡すというような趣旨のイベントだったらしい。
途中から入ったので、十分に趣旨を把握することができなかったのだが、恐らくそんな感じだった。
J2に入学した「ジュビロ君」と「カマターレくん」。卒業した「徳島くん」などなどが、前に出て、何か喋って、コールをする。なかなか楽しい。惜しむらくは、途中から入ったのでノリがよくわからなかったことだ。カマタマーレコールは一緒にやりたかったなぁとは思うものの、入場して1分で大声でコールすることなんて出来そうになかった。
「ジュビロくん」は割とすぐにJ2党に馴染んでいたようだ。「ずっとJ2にいてくださいね。千葉コースもありますよ!」というようななかなか際どいことを言われて、笑いを誘っていた。
一方で、昨年「ガンバくん」は来てくれなかったらしい。まぁ遠いしね。「札幌くん」はわざわざ飛行機で来たみたいだけど。
その前の「FC東京くん」は、J2に馴染む気がない感じだったというエピソードが紹介され……
ちょっとイラっとした。
というのも、歴史に残るようなビッグゲームを観戦してボロボロ涙を流してきた後だったからだ。唐突にディスられるとちょっとイラつくものだ。
しかし、ちょっと落ち着くと何が起こったのかわかった。どういう人が前に行ったのかわかった。恐らく、東京の若者らしい若者が参加したのだろう。
内心は自分に自信がなくてオドオドしている癖に、ネット上では勢いがよく、自分の意見が何よりも正しいと思い、自分が魅力的に振る舞えることを疑っていない。
人よりも情報を多く持っていることを拠り所にしていて、コミュニケーション能力が十分に育っていない。
そして、自分は魅力的だと思っているにもかかわらず、いざ表舞台に立たされると緊張してうまく振る舞えずに、後でズーンと落ち込んでしまう。
きっと、そうだ。ああ、それは10年前のぼくだ。そう、それが東京の若者の姿だ。そのことはあまり責めないで頂きたい。その東京人だって、精一杯みんなと仲良くしたかったのに振る舞い方がわからなかったのだ。どうすればみんなに喜んでもらえるのかがわからなかったのだ。
と、自分の昔を思い出してちょっと切なくなったりする一幕もあった。
この「東京の若者ストーリー」は、100%ぼくの妄想に基づいているので、事実とは一切一致していないことを断っておく。
そして、アビスパ福岡の財政破綻(資金繰り?)の問題について、当事者からの話を聞くことができた。この話が出たときは、まだあんまりJリーグに興味を持っていなかったようで、経緯をよく知らなかったので、非常に勉強になった。しかし、なんだかなぁと思うところもあった。ご利用は計画的に。
第二部 オレンジ色のチーム、スタジアムは最果てに
さて、第二部は漫画家の能田達規が登場。
最近「徹マガ」にも能田先生のインタビューが掲載されていた。
通巻174号「四国にJクラブなんかできっこないと思っていました」 能田達規(漫画家)インタビュー<前篇> | 宇都宮徹壱公式メールマガジン「徹マガ」
能田先生は、日本サッカーのアンダーカテゴリーに焦点をあてた漫画を描いている漫画家で、愛媛FCのマスコットキャラなどのデザインをしている。
そういった背景から、今回は愛媛FCについての話を聴くことが出来た。愛媛FCといえば、チョンマゲ隊のツンさんが動員数を増やすために活動していたチームで、能田先生とも連携しながら色々とやっていたらしい。
その話は前日にツンさんから直接聞いていたので、能田先生の話は非常に楽しく聞くことができた。
愛媛FCの場合は、観客動員を増やす最大の肝は、やはりスタジアムまでのアクセスのようだ。色んなチームについてよく聞く話だ。スタジアムが遠すぎて行く気がしない、と。
これを解消するのはなかなか難しい。駅チカにスタジアムがあれば、サッカーが人気コンテンツになるかもしれない。しかし、現状では不人気なコンテンツのために、駅チカにスタジアムを作るわけにはいかない。
だから、たとえ場所が悪かろうが、人を集め続けるしかないのだろう。辺鄙な場所であっても人が溢れるようになれば、10年、20年のスパンでみるといずれ良い場所にスタジアムが作れるようになるかもしれない。
なかなか難しい話だ。
ところで、能田先生の本はまだ十分に読めていないのだが、これだけは読んだ。
サッカーの憂鬱というのは、普通は注目されない裏方などに注目した作品だ。
「審判」「広報」「代理人」「第三ゴールキーパー」「ホペイロ」などが、どのような苦労をしているのかを描いている。
傑作なのが「ライター」で、苦労して文章を書いたあと、ウェッブで評判をみて「ギャー……」と叫ぶシーンが笑うに笑えないリアリティだった。
物書きとして、そうならないためには、人間を磨く以外に方法がない。北方謙三とか岡本太郎の文章なんて叩こうと思っても叩けないからね。
第三部 Jリーグに革命を起こすアイディアを拝聴する
ライターの吉崎エイジーニョさんとREGISTA有限責任事業組合の谷塚哲さんのお話。
これ、実に面白かった。
よく「クラブ」という言葉を聞くが、これは「地域に密着した総合スポーツクラブ」のことだ。
つまり、地域の人がスポーツを楽しむことを主旨としている団体のことだ。
そして「ソシオ制度」というものもあるが、これは結構誤解されているものらしい。単にシーズンチケットを買ったり、チームに寄付金を納めたりすることがソシオの条件ではない。
「ソシオ」とは、「地域に密着した総合スポーツクラブ」の一員であり、その運営に関わる人のことだ。この「運営に関わる」という部分がとても大切。
どういうことかというと、ソシオは選挙権を持っていて、クラブの運営部を決めることが出来る場合もあるらしい。例として出していたのはFCバルセロナで、ここではソシオが会長などを選んでいるらしい。
現状ではソシオというのは、「気前の良いお客さん」という程度の扱いであるとしたら、羊頭狗肉であると断じてもいいかもしれない。本当の意味での「ソシオ制度」というものが導入されているチームも日本には出来てきた(あるいは出来つつある)ようだが、色々考えながら聞いていたので詳細がわからなくなってしまった。
多分、これが、Jリーグを変えるキーになるだろうなと思った。今のJリーグって、サポーターが怒っていることが多い。その理由は、運営者サイドがサポーターの気持ちを全然分かっていないことが多いし、サポーターの利益よりも他のことを優先することが多いからだろうと思っている。
もし、本当の意味でのソシオ制度が導入されれば、サポーターはソシオになればいい。そうすれば自分たちの責任でチームの運営部を選ぶことができる。だから、延々と不満を言うこともなくなる。さらに言うなら、Jリーグ自体の運営部も、各チームソシオによる大選挙で選んでしまえばいいかもしれない。この意見はちょっと過激かもしれないけど。
谷塚哲さんのお話はロジカルでわかりやすく、非常に面白くて刺激的だった。いずれもっと詳しいお話を聞いてみたいと思った。その前に、著作があるようなので読んでおきたい。
言っている内容は非常に正しく、うまくやれば日本のJリーグに革命を起こすことができそうだと感じた。一方で、プレゼンテーションをする人を間違えているようにも思った。チームの経営陣や役所に話してもしかたがない。サポーターに話しても効果は薄いだろうと思う。
1つアイディアが浮かんだ。が、もう少しちゃんと調べないと出来るとか出来ないとかは言えない。それにブログに書くと、「持って行きマン」がすぐに出るから、あんまり書きたくない。
ともかく、谷塚哲さんの活動は今後も興味深く見ていきたい。
一部の入学式のようなフワフワした感じが続くのかと思いきや、漫画家の先生あり、谷塚哲さんの真面目なお話もありで、大変充実したイベントだった。深夜の部は、ロック総統大暴れの会だったのだが、夜更かしをするとお肌のハリが失われるのでそちらは諦めて帰途についた。
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