物書きタクシードライバー
中村慎太郎
東京生まれ、東京育ち。タクシー乗務の合間にブログ記事やサッカー旅記事、タクシーエッセイなどを書いている。
今日これから。
「新」国立競技場にて。
ルヴァンカップ決勝。
柏レイソルvsFC東京。
この試合はとても重要な意味を持つ。
というのもぼくにとって初めてのタイトルを賭けた試合なのだ。
ぼくは、2013年にFC東京を応援し始めた。
その時のことは当ブログ「はとのす」に記してある。
何のかんので書籍にもなった。
あれから7年と4ヶ月。
FC東京は、タイトルをかけた戦いを一度もしていない……。
よね?
若干記憶が曖昧なので調べてみたのだが、流石に記憶違いはなかった。
2013年から2019年において、もっともタイトルに迫ったのは昨季(2019年)のリーグ戦くらいのもので、カップ戦については2013年の天皇杯ベスト4が最高である。
ちなみにこの年のベスト8は、仙台のユアテックスタジアムで開催されたベガルタ仙台戦で、延長にまでもつれ込む熱い展開の試合だった。この試合を表現するだけの力はないと知りつつも、拙著『サポーターをめぐる冒険』では、15000字の大レポートを書いた。
「東京からメリークリスマス」
あの時の体験が忘れられなくて、その後5年くらいずっとサンタ帽子を被っていた。そのくらい人間の頭をおかしくするクリスマス前の激闘であった。
そのあとのベスト4は、仙台戦とは打って変わったつまらない試合だった。対戦相手はサンフレッチェ広島であり、監督は塩試合製造の匠として有名なポイチこと森保一であった。
そのへんもこの記事に書いた。
森保一監督のサッカーがつまらない理由とは
森保一監督については、塩職人シリーズとして2019年のアジアカップにおいて散々書いたのだが、もう書くことはない。
攻撃的なサッカー監督の戦術がペガサス流星拳ならば……。つまり1秒間に100発のパンチを繰り出すとしたら(ちなみに彗星拳は1秒間に1000発だっちゃ!)、森保一監督のサッカーはオーロラエクスキューション。マイナス273度。すべての運動が停止する絶対零度である。
何を言っているのかよくわからない人は、聖闘士星矢を熱唱できるくらい喉を鍛えてきて欲しい。
FC東京のタイトルを列挙する。
2004年 ナビスコカップ優勝 ファン・アクーニャカップ優勝
ファンアクーニャカップとは何か。初めて聞いたので調べてみたのだが、「梶山、変態」などという断片的な情報が出てくるだけなので、私はそっとグーグル先生に別れを告げた。
2009年 ナビスコカップ優勝
2010年にJ2に降格
からの2011年J2優勝&天皇杯優勝
このあたりは、懐かしく思い出す人が多い。2013~2014年に色んなサポーターと話をしたときは、このあたりからサポーターになったという人が多かった。
サポーターが求めるのは勝利である。一方でサポーターを生むのは、つまり、応援しようという気持ちを巻き起こすのは、情熱のある負け犬(passionate loser)なのである。
そういう意味だと今の川崎フロンターレようなクラブは、強いことに飛びついたファンが増えていて、古参のサポーターはイライラしているかもしれない。元々はやんちゃなサポーターがいるクラブだったのだが……。
勝つことで失われる者もあるし、負けることで得られる者もある。
負けるから、弱いからこそ応援しようと思う。
それも人の心というものだ。
ただし、勝者よりも敗者のほうが精神的な崇高さは求められる。
負けた時に開き直ってはいけない。
すぐに合コンを開いてサポーターに暴露されてはいけない。
InstagramLiveでちゃらついたファン女性向けの発信をしてはいけない。
負けてもいい。負けた時こそ背中を見せて欲しい。
勝負事なんだが負ける時は負けるんだ。
負けた後、立ち上がる姿を見せて欲しい。
二度とは負けない覚悟を見せて欲しい。
そういう背中に我々は惚れるのだ。
あの日。
つまり2013年の12月に開かれた天皇杯の準決勝で、FC東京が敗北したからこそ、あの時敗北したメンバーを応援しようと思ったのだ。
負けた背中を見ているからこそ、勝利して喜びを突き上げる姿に涙が止まらなくなるのだ。
あの時のメンバーでまだ残っているのは、東慶悟、森重真人、帰ってきたたまちゃんくらいのものではないだろうか。
ただ、負けというならば2019年の敗亡も大きかった。その時感じたことはこの記事にまとめた。
FC東京サポーターを6年で卒業することにした・前編 【続・サポーターをめぐる冒険】
今日の試合は、FC東京が圧倒的に不利な状況にあるとされている。
それもこれもハードスケジュールを戦い抜いた結果だ。
リーグ戦で大きな成果が出たとは言いがたい。ぼくも熱心に応援したとは言いがたい。今年は生き抜くのに精一杯であった。
仕事仕事で子供達と十分に遊べない日々も続いた。
タクシーの乗客に殴られて被害届を出すなんてこともあった。
交通事故を起こして心身共に大きく落ち込んだ日もあった。
それでも生き抜いてきた。
その結果、仕事にはなれて、ライター専業の時よりも安定した収入が得られるようになった。何せ、タクシーの乗務を月に200時間以上しながら、ライターとしての仕事量は以前とあまり変わらないのだ。金銭作物を書く仕事の割合は激減させて、好きなことをやっているので、収入面では完全にタクシー依存であるが。
本当に色んなことがあった。
最初のうちは「おまえなんか真のサポーターではない!!」とかクソリプをつけてくるやつがワラワラ湧いてきた。それを受けてもっと一生懸命応援しなきゃとか、サポーターとして尊敬されるようにならなきゃみたいな気持ちになったこともあった。
時は変わって今はタクシー業界で同じようなことを言われるようになった。「おまえみたいな不真面目なドライバーは許せん!」みたいなことをわざわざ言ってくる奴もいる。
自分が無理をして頑張っている人は、他人が気になってイライラするものなのだ。
今ぼくの周りに真のサポーターなどいない。
ぼくも真のサポーターなんかではない。
自分の家庭や仕事に余裕があるときだけFC東京の試合を楽しんでいる。FC東京が戦っていてくれて本当に良かったと思うけど、サポーター内での序列みたいなものにこだわることなどない。
もし。
身の回りにそういう人がいたら……?
サポーター内でマウントを取る以外に自分の存在理由を見いだせない可愛そうな人だから、そっと離れるほうがいい。まずはミュート、絡んでくるならブロック。スタジアムであっても目をそらす。それでOK。
サポーターは家族ではない。同じクラブを見ているだけの他人だ。サポーター同士の繋がりは水よりも薄い。
と同時に、血よりも濃い。
今日。
2021年1月4日。
ルヴァンカップで優勝することが出来たら。
その時だけは大切な仲間であり、一生の友達だ。
興奮が冷めたらそこで解散、さようなら。
また次の勝利を待ちましょう。
勝つかな、負けるかな。
勝てるといいな。
勝ちたいな。
東西南北、古今東西。
すべての青と赤の民よ、集え!
スタジアムに来れない者も、ライブで試合を見れない者も、気持ちだけは戦おう。
決戦は国立競技場。
平山を!!平山を呼べぇ!!!(引退
おいおい、ふざけんなよ!!!
何書いてんだよ!!!
2012年以降、FC東京がタイトルを取っていないなんて嘘を書くんじゃねぇよ!!!
2016年に「Jリーグ・スカパー! ニューイヤーカップ 沖縄ラウンド」を獲ってるだろうが!!!
知らんがな(´・ω・`)
stand.fmでJリーグ初観戦記事を思い出しながら語っています。
FC 東京に出会った日、Jリーグを初観戦した結果思わぬことになった。
中村慎太郎
東京大学文科Ⅱ類→文学部倫理学専修.
東京大学大気海洋研究所でアワビ類の行動を研究する.
その後、フリーランスライター/作家/ブロガーとなり『サポーターをめぐる冒険』(ころから)を上梓。サッカー本大賞2015を受賞.
現在はタクシードライバーをしながら、旅とサッカーを紡ぐウェブ雑誌“OWL magazine”を主催.
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