「山登り、文芸、サッカー観戦、最強の旅行記、喫茶店案内」最近読んだ本 その4


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劒岳<点の記> 新田次郎

映画にもなった作品。何気なく手に取った本だったのだが想像以上に面白かった。
実にミーハーなのだが、「世界の果てまでイッテQ」のイモトの活躍を見てから登山というものが面白そうに思えてきた。
自分でやる気はあまりしないのだが(だって辛いのは嫌じゃないか)、山登りに生きる人というのはどういうものなのかには興味があった。

測量技術や天候の読み方など、何かの参考になるかもしれないマニアックな要素が詰まっている本で、そういうのが好きな人にはとてもお勧め。とって付けたように出てくる奥さんの可愛らしさもなかなかのもの。

文藝春秋(2013年10月号) 日中韓百年戦争

寝付きが悪くてフラフラと散歩に行ったコンビニで衝動買いしてしまった。深夜に読むにはなかなかつらい雑誌なので、すぐに眠りにつくことができた。

冒頭の特集「日中韓百年戦争」は読み応え十分だった。普通の雑誌だと、「これだけしか載ってないの?」と残念な気持ちになることも多いのだが、総合雑誌の場合そうはいかない。「もういいよ、そんなもんで。わかんなくなっちゃうから……」とこっちが怯んでからが本当の勝負の始まりなのだ。

面白かったのは「小津安二郎」の仕事の仕方。蓼科の山荘に泊まり込む。恋人も蓼科に呼び寄せる。朝から酒を飲んで、散歩して昼寝をして、温泉に入る。そして夜にちょこっと仕事をする。

野球の中継がある日は近くのホテルのロビーで観戦する。そういう暮らしをしているうちに次第に乗ってきて仕事の時間が増えていく。最終的には一日中仕事をするようになり、一気に映画の構想を完成させる。

非常に優雅な仕事の取り組み方で大変羨ましく思えたのだが、どうも内情はそんなものではなかったらしい。

「蓼科へ行ってからは、苦悩ったら大袈裟だけど、仕事に対する悩みは身に滲みて辛かったらしいですよ。のんきに酒呑んでいるけど、もう鳥と同じで舌ではこうやって(水をかいて)いるんだって。どうすればいいんだ、どういうものを作っていけばいいんだ、とね」(p.355)

物作りする人の苦悩は、どこでも一緒だ。どうせ苦しむならこういう風に優雅に苦しみたいものだ。

他にも上杉隆が「ツイッターはあかん」と語っていて、タイトルからして「おまえが言うんかい!」と突っ込みたくなった。ツイッターで呟くことで世界が変わるって。だってこれの著者だもの。

なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか(晋遊舎新書007)

冒頭付近の大特集も面白いけど、総合雑誌を読むと予想をしていなかった記事にぶつかることがあるのは嬉しい。

サッカー「観戦力」が高まる 清水英斗

この本については別途書こうと思うので簡潔に。
1年以上前に読んだ切りだったので読み直してみたが、今のサッカー観のベースになっているのは間違いないと感じた。

「観戦力」のいいところは、読むとサッカーがうまくなること。プレイヤー目線での記述が多く、次の瞬間から活用することができる。

いま、スポーツにおいて「座学」が果たす役割は何かというテーマを薄ぼんやりと考えているのだが、「観戦力」は重要なファクターになるのではないだろうか。

幻のサッカー王国 宇都宮徹壱

この本はサッカーをよく知らない人にこそお勧めしたい。

この間、宇都宮徹壱さんと清水英斗さんの講演イベントを聞いたことを切っ掛けに、宇都宮さんの著作を買い集めてみた。机には宇都宮さんの本が積み上がっていて、フットボールの犬 (幻冬舎文庫)という本に関しては二冊もある(何故だ……)。

その中で、「幻のサッカー王国」というのは、処女作にあたる。

先ほど、サッカーを詳しくない人にもお勧めしたいと言ったのは、この本を読むのにサッカーの知識がほとんど必要ないからだ。せいぜい、ドラガン・ストイコビッチ(ピクシー)くらい知っていれば十分ではないだろうか(それだって別に知っている必要はない)。

サッカーが主題ではあるが、紀行文として非常に優れていて、これ以上ないほど面白い。
当時30歳前後だった宇都宮さんがドキドキワクワクしながら、崩壊したユーゴスラビアを旅していく。

宇都宮さんのプロフィールページより引用。
「あらためて読み返し、あの旅の中で撮影した写真を見てみると、表現力の拙さにしばしば赤面しながらも、一方で「あの時のような旅は、もう二度とできない」という事実に慄然とさせられる。その後、私は何カ国も旅することになるが、あの時のような鮮烈かつ濃密な旅というものは、いまだに体験することなく現在に至っている。」

プロフィールページ 2枚目より

「拙い」とご自身で書いているが、ぼくの頭に浮かんだ言葉はこうだった。

「クオリティーという点では、これ以下のものを書くことはないのかもしれない。しかし、ある意味では、これ以上のものも書けないのではないだろうか」

この先、別の著書を読み進めていくことで若き宇都宮さんの文章や感性が、その後どうなっていくのかを追体験できるかもしれないと期待している。

大冒険に出た時の、生の感覚がそのまま脳に入ってくる素晴らしいトラベルログという点で、旅の途上には常にフットボールがある。しみじみと良い作品なので、とてもお勧め。

(最近、宇都宮さんにフェイスブックでフレンド登録して頂いたので、このブックレビューを読んで頂く機会もあるかもしれない……ドキドキ。でも、だからといってお世辞を書いたり、ウソの美辞麗句を並べたりはしない。そういうのは必ず伝わっちゃうしね。この本については、本当に面白いしお勧めだからそう書いたまで。)

東京喫茶名店案内

コンビニで衝動買いした喫茶店のガイド本。オールカラーで写真も美しく、一店ずつ丁寧に紹介されているので好印象を覚えて購入。108軒も載っていて、魅力的なお店がかなり見つかった。

読書に使う場所、打ち合わせに使える場所、ただのんびりする場所など、お気に入りの場所を見つけたい。

基本家で引きこもる仕事なので、こういう気分転換はとても重要だ。カフェにはお金を惜しまないことにしよう。

今回の一押しは「幻のサッカー王国」。旅行が好きな人、写真が好きな人、サッカーが好きな人、歴史が好きな人にお勧め。

サッカーに関心はあるけど、楽しみ方がいまいちわからないという人がいたら「観戦力」は必読。

喫茶名店案内は、好きな人は手元に置いておくのもいいかもしれない。

剱岳は山好きの人、どうぞ。

文藝春秋はどうなんだろう? 総合雑誌の読者にあまり会ったことがないのでよくわからない。活字を読み続けていないと発狂してしまう人にはお勧め。

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