東大に11年在籍した後、タクシードライバーになりました

はとのす 

Jリーグ サッカー論

Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった。

更新日:

Pocket
LINEで送る


 
 

サッカーは好きだが、興味の中心は「自分でプレイすること」、「日本代表」および「海外サッカー」だった。そんな中で、とあるJリーグフリークからこう言われた。

「日本人のサッカーファンなのに、Jリーグを見ないのはどうかしている。」

そう言われてしまってはどうにもならない。自分なりに努力をした。サッカーマガジン、サッカーダイジェストを読み、やべっちFCを視聴することにした。テレビで放映している試合も何度も観た。

しかし、正直言ってJリーグの魅力が伝わらなかった。

一方で海外サッカー、とりわけチャンピオンズリーグのような強度の高い試合では、呼吸を忘れるほど興奮した。残念ながら、それと同じような気持ちにはJリーグの試合ではならなかった。

テレビユーザーを惹き付ける力は、Jリーグよりも海外サッカーのほうが強いと感じた。知っている選手は少ないし、選手名鑑を買って勉強してみてもいまいちしっくりこない。

どこのチームも応援する理由がなかった。

これは実は大切なポイントだ。応援するには理由が必要なのだ。

スタジアムに行けば違うのかもしれない。

そうは思っていたのだが、なかなか足が向かずにいた。

そんな中、10月5日土曜日、国立競技場、FC東京vs鹿島アントラーズに行くこととなった。「誘われたから行く」というあまり積極的な動機ではなかった。この試合は、東京オリンピックに向けた工事が始まるため、現在の国立競技場で行われるJリーグの試合としては、このカードが最後とのことだった。

テレビではいまいち楽しめなかったJリーグ。現場に行ってみるとどう感じるのか。自分でも楽しみだった。

Jリーグを熱烈に愛する人がいる一方で、ネガティブな意見を聞くことも多い。かつてのJリーグブームは一過性の「過ち」で、現在は斜陽にあるリーグなのだろうか。だとしたらどこに原因があるのだろうか。どういうお客さんが来て、どういう楽しみ方をしているのだろうか。

Jリーグが始まって20年。今更初観戦をしているのも間抜けな話だし、今更の体験記を書くことは若干恥ずかしい気持ちもある。しかし、Jリーグとしても、ぼくのような人間を引き込むことは大切な課題なのではないだろうか。

すなわち、サッカーが好きで、実際にプレイして、日本代表や海外サッカーは好きだけど、Jにまで興味が向いていないという人間だ。サッカーに全く興味がない人を引き込むことも大切だが、こういう層を引きずり込むことも大事だろうと思う。

Jリーグ、試合前の光景について

スタジアムに足を踏み入れる。

すると、煌々とライトが輝き、フィールドが広がっていた。

DSCF6534

この瞬間、異空間に足を踏み入れたことが確かに感じとれた。

一言で言うと「あ、気持ちいいな」という感覚。もう少しファンになると「来たぜ!!!!テンション上がるぜ!!!!」という感覚になるかもしれない。

舞台が非日常空間であること、これは非常に大切なことだ。これがなかったらわざわざスタジアムに行く必要がなくなってしまう。本当はこういった「汎用の競技場」ではなく、「サッカー専用スタジアム(専スタ)」があるに越したことはないのだろう(そういう意味で冒頭のJフリークには、柏レイソルを勧められた)。

当日は台風の予報だった。幸いにも少し逸れてくれたようではあったが、小雨が続く面倒な天気だった。そんな日でもサポーターはスタジアムに集結していた。後で調べてみると、この日の動員数は30,673人だった。

3万人!?

Jリーグが斜陽だって?誰がそんなことを言ったのだろうか。この動員を見る限り、この空気を感じる限りは、傾いているという印象は受けなかった。むしろ、大盛況している興行という印象を持った。

日本で3万人を集められるコンテンツがどれほどあるだろうと考えると、これは凄いことなのだ。Jリーグは強く愛されている。「応援するチームがあり、スタジアムにまで駆けつける理由がある人々」が3万人もいるのだ。

一方で、放映権の販売などのビジネス面では課題も多いのは間違いない。

3万人のファンはJリーグを支えることはできているが、今以上に盛り立てることはできない。これは、悲しくもあるが厳然たる事実なんだろう。今以上に強くて権威のあるリーグにするためには、日本国内でテレビ視聴する人を増やす必要がある。それだけでは留まらず、海外のJリーグ中継ファンを増やさないといけない。

閑話休題。

スタジアムの席を見つけて、座る。濡れていて冷たい。
雨に備えた装備をしてこなかったので、色んなものが濡れてしまった。ワールドサッカーダイジェスト、Jリーグ選手名鑑、ノート、手帳……etc。

会場で話したベテランのJリーグファンは、「屋根がないスタジアムが多いのが難点なんだよね」と教えてくれた。確かにその通りだ。濡れながら観戦するのは決して快適ではない。もっとも、ベテラン観戦者たちは手慣れたもので、チームカラーのしっかりしたレインコートを着込み、荷物が濡れないようにゴミ袋に入れていた。流石だ。

試合前には、ブラスバンドの演奏にあわせて、ちびっ子チアダンサーたちが踊りを見せてくれた。こういうのはとても和む。

選手達が練習を始める。
ここで一つ衝撃を受けた。当たり前と言えば当たり前のことだが、選手達が尋常ではなく上手い!!

ハーフライン近くまで距離を取りあって、ポーンっとロングキックを蹴る。それがピンポイントで足下に届く。ポーンっと蹴り返すと、それもそれずにしっかり足下へ落ちる。あれ?ちょっと横にそれたかな?と思ったら、ぐねっと曲がって、これも足下に落ちていく。

キックももちろんのこと、ボールタッチの一つ一つが柔らかくて丁寧で、それを見ているだけで飽きることがない。プロサッカー選手は、とんでもなく上手いという当たり前のことを再確認した。しかし、技術の巧みさはテレビ中継では伝わりづらいように思えた。テレビ画面を通すとボールタッチくらいは当たり前に見えてしまう。なぜだろうか?

肉眼で見るボールタッチは繊細かつ豪快で本当に凄いものなのに。

選手紹介も面白かった。

鹿島アントラーズの選手紹介で、

大迫勇也!

とアナウンスされた瞬間に、特大のブーイングが起こった。この感じは、スタジアムに行かないと味わえない。ちなみに、柴崎岳と小笠原満男に対するブーイングも大きかった。全盛期は過ぎたという意見も聞いたことがあるが、小笠原の脅威は健在ということか。

ちなみに、FC東京の選手に対しては、ルーカスと渡辺千真に対するブーイングが大きかった。

そして、ホームのFC東京の応援歌をみんなで合唱。

You'll never walk alone

調べてみるとこの曲は“定番”の応援ソングのようだ。リヴァプール、セルティック、アヤックス、ディナモ・ザグレブなど世界中のクラブの応援歌として愛されているらしい(バイエルンとドルトムントの両方ともこの歌を歌うらしいんだけど、大丈夫なのかしら)。

FC東京と書いたチームカラーのタオルを胸の前に掲げて歌うのがスタイルのようだ。ぼくがいたのはスタジアム中央あたりだったので、気合いの入ったファンは少なかったが、“ちょっとは”いた。こういうのを見ているとタオルが欲しくなっちゃうね。

そんなことをしているうちに、試合が始まった。

スポンサーリンク

試合開始

試合のレポートをするのが趣旨ではないので簡易的に。

実にあっさりとした一方的な試合だった。

開始後、すぐ6分に、左サイドでダヴィがうまく受けたボールから切り返し、中央のジュニーニョにボールを入れる。そこから右サイドの遠藤康へ。

遠藤にプレッシャーをかけるべきディフェンスが、右サイドに抜けていくデコイに釣られたか、オープンに。そのまま遠藤がGKの頭を越えるふんわりとしたミドルシュートを決めて先制点。

東京 0 - 1 鹿島

続いて3分後に、大迫からの縦パスをダヴィが力業で押し込んで2点目。わずか10分で2点差がついてしまった。

東京 0 - 2 鹿島

サッカーの2点差は重いが、時間はまだ十分にある。まずは1点を返すという心境になるべき場面だ。

しかし、ハーフタイムを挟んで、67分。小笠原がドリブルから持ち込みミドルシュートを突き刺す。

東京 0 - 3 鹿島

この時点でFC東京が勝てる可能性はかなり低くなってきた。

その上、81分。ジュニーニョの縦パスを大迫が押し込んで追加点。

東京 0 - 4 鹿島

残り時間はアディショナルタイムを入れても10分ない。その間に4点取るのは、ほとんど不可能に近い。何とか2分後に平山が1点返すも、そのまま試合終了。

東京 1 - 4 鹿島

試合自体はあまり面白いものではなかった。極端なことをいうと、開始10分で試合の大勢は決していて、その流れに抗えずに終わってしまった形だったからだ。やはりもう少し競ってくれないと盛り上がらない。

FC東京も必死のディフェンスからカウンターを展開するが、どうも得点の気配がしない。カウンターを決定機に結びつけていく戦術が不足しているのか、あるいは、鹿島にそれを潰されていたのか。ふらっと初めて試合を観たぼくには分析することはできなかったが、FC東京ファンからすると歯がゆい試合だっただろうと思う。

Jリーグ観戦の楽しみ方 試合編

さて、観戦してみた気付いたこと。

DSCF6551

戦術的な観点から楽しむのは、前提知識を豊富に持っていないと難しいと感じた。リプレイもスローモーションもない試合の会場で観戦する場合には、戦術分析を楽しむのは玄人向けの楽しみ方なんだろう(広島や浦和のあのややこしいシステムなんかは、理解していないサポーターも結構いるのではないだろうと思っているのだけどどうだろうか)。

お互いのチームのフォーメーション&システムと戦術、またそれを機能させるためのキーポイントを把握しておく。その上で、キーポイントをいかに潰しに行くかという守備戦術をいくつか想定しておく。そして、実際にそれらがいかに機能しているかを理解し、その上で監督がどう対応していくのかを理解し……

多分、こういうのは、サッカー通やプロの分析者や監督経験者みたいな人じゃないと難しいのではないだろうか。サッカーをあまり知らない女性や子供に言ってもあまりわかってもらえないタイプの楽しみ方のような気がする。

Jの面白さをマニアに尋ねた時に「戦力が均衡しているから戦術の差を見るのが面白い」と言っていたが、それではマニアのためのリーグになってしまう。かつて天下を取ったプロレスという興行が衰退してしまった原因は、マニアしか見ないものになってしまったためだと聞いたことがある。「戦術が面白い」なんて言っていたら駄目だ。

そりゃ確かに戦術分析をする対象としては熱いリーグなんだろうと思う。例えば、リーガのレアル・マドリード対ヘタフェの試合では、大抵はレアルが勝つ。その理由は戦術ではなく戦力の圧倒的な差だし、さらに言えば「金」の差だ。

一方でJリーグは、若干の傾斜あるものの資金力には大差がない。だから、戦術が“効く”。というわけで理屈はわかる。しかし、スタジアムで戦術を楽しむというのは、マニア向けの楽しみ方だ。そういう楽しみ方もあるし、ぼくも当然好きだが、それだけでは成り立たない。

Footballistaの編集長の木村浩嗣氏が、グアルディオラの戦術の師匠筋にあたる人にインタビューした際に(誰だっけ……)、「戦術がどうのとか、ファンが気にする必要ないんだよ。」という風に怒られたというエピソードを聞いた(このイベントの時、引用先には記述なし:フットボリスタ編集長木村浩嗣氏の話を聞いてきた 月刊化編)。

戦術を楽しむのは高度な楽しみ方だ。
一方で、「個」を楽しむのはどうなんだろうか?

縦横無尽に駆け抜けて小憎いパスを捌く柴崎岳には感心し続けた。ジュニーニョは明らかに目立っていた。徳永に注目してみようと思っていたのだけど、この2人ばかりが気になってしまった。全体を俯瞰して見るよりは、自分のお気に入りの選手や気になった選手に集中するというやり方はいいかもしれない。

しかし、柴崎岳さんは本当にすごいね。ああいう風にサッカーが出来たらどれだけ楽しいんだろうか。ディフェンスラインまで降りていってパスをもらって、即座に鋭く前に出して、そのパスがチャンスに繋がっていく。何分か先の世界が見えている(ように思える)選手は大好きだ。やっとさんも生で見ると違うのかもしれない。

鹿島が圧倒している展開だったので、FC東京の選手はあまり印象に残らなかった。

スポンサーリンク

Jリーグ観戦の楽しみ方 観客席編

試合を楽しむこと自体はテレビでもできる。テレビではわからないところもあるだろうが、試合を理解するだけならテレビのほうがわかりやすいと思う。

しかし、観客席に座ることによる楽しさというのは、スタジアムにいかなければわからない。

最初に書いたように、大きなスタジアムは迫力満点で、異空間に迷い込んだような気持ちにさせられた。この非日常感だけで70点は取れる。でも、少し弱い。

もし非日常を味わうだけなら、ライブハウスに行ってもいいし、ディズニーランドに行ってもいいし、森を散歩してもいいし、ダイビングをしてもいい。

なぜ、サッカースタジアムに行かなければならないのか。

しばらく座っていると、多くの観客は口を使っていると言うことに気付いた。

1.食べている
ホットドッグやポテトなど、品目が豊富とは言いがたいが一応売店があった。前の席に座っていたFC東京サポの夫婦は、途中何度も席を立って食べ物を仕入れていた。フライドポテト、ホットドッグ、フライドポテト、チキン、フライドポテト…… 他にもサラミ、ビーフジャーキー、するめなどを食べていた。カロリー摂取量を心配してしまうレベルだった。

ともあれ、もぐもぐ食べながらサッカーの試合を眺めるのは、自宅ではちょっと味わえない開放感だ。

2.飲んでいる
スタジアムにはビールやチューハイも売っていて、多くの人が一杯やっていた。前の席の夫婦ももちろん飲んでいた。FC東京が失点するたびにおかわりを買いに行っていたのには、哀愁が漂っていた。

隣の席に1人で座っていた、大学の哲学科の院生という風情の男性は、おもむろにウィスキーの小瓶を取り出してストレートでやっていた("飲んで"いたというより"やって"いたという風情)。

試合が終わる頃には全部飲み終わったようで、フラフラしながら去って行った。彼がどういう楽しみ方をしていたのかは知るよしもないが、これもなかなか良い楽しみ方だと感じた。

あんまりにも飲んでいる人が多いので、ハーフタイムにぼくもビールを一杯飲んでみた。おかげで後半戦はぼんやりしてしまって細かいところまでチェックできなかったのだが、ひんやりとした美味しいビールを味わえたので後悔はない。

スタジアムでビールを飲んで気持ちよくなるというのは悪いものじゃないね。ビールを飲んでしまうと戦術がどうのなんて全く考えていられなくなるけど、逆に難しいことを考えずにサッカーを感じることができた。

カウンターでオープンになった時に、「おおお!!」と声を出す。そこからのシュート!!「あ、あ、あ、あー!!!!」と声を出す。サッカーを楽しむというのは、本当はこういう単純なものなんだろうと感じた。

(そう考えると、雑誌に載っていることはちょっと難しいのかもしれない)

そして、キンキンに冷えたビールのおかげで3つ目の楽しみ方が感じられた。

3.歌っている

熱心なサポーターは常に何かを歌っていた。声に出していた。ゴール裏のサポーターは声がかれるほど歌っていた。世界中のスタジアムでも、大声で歌っているサポーターがいる。

チャントと呼ばれる応援歌が編み出され、状況に応じて様々なメロディがスタジアムに響き渡る。

ぼくが座っていたのはスタジアム中央で、ゴール裏からは一番遠い場所だった。そのため、周りには飲み食いしている人ばかりで歌っている人はほとんどいなかった。最初のうちは実に静かなものだった。

FC東京のファンからすると実につまらない展開だ。10分で2失点し、後半の半ばで3点目を失った。その時点で帰る人がいてもおかしくないような試合だ。

しかし、帰る人はほとんどいなかった。

一方で、チームを応援する歌声は強くなっていった。チームが劣勢になっていくにつれて、チームを支える歌声は強くはっきりしたものになっていった。

絶望の3点目を小笠原に決められた後、「何やってるんだよ。」とか「しっかりやれよ!」という声は聞こえてこなかった。代わりに、ぼくの周囲でも歌い始める人が増えてきた。拍手も強まってきた。

最初はゴール裏だけにあった熱気が、いつの間にかスタジアム中央まで伝播してきた。

後半はずっとこの曲が歌われていた。

バーモバモバモ 東京
バーモバモバモバモ 東京
この気持ち止まらないぜ
オオオオオオオ オオオオオオオ オオオオオオオ 東京

バモバモとは何かという疑問はあったが、いつの間にかぼくもその流れに飲み込まれていた。上の動画でも35分間この曲が続いている。時間のある人はこれを聴き続けてみて欲しい。変な気持ちになるから。

さて、この試合は優勝争いのライバルとの大切な試合だった。にもかかわらず、3点目を決められて敗北が9割方決まってしまった。

でも、試合に負けたとしても、シーズンは続くし、チームも続いていく。
落ち込んでいる暇はないだろうし、“そういう時こそ”チームを応援する気持ちが求められる。そういうことなんだろうか。

「サッカーは人生と同じだ」と言ったのが誰だったのか覚えていないが、恐らく多くの人が感じ、口に出してきた言葉だろう。人生でも勝ち続けることはできない。劣勢になってしまうこともあるし、惨めに負けることもある。

そんな時でも下を向くべきではない、ということだろうかか。

そうこう考えているうちに、FC東京が4つめの失点をする。これでほぼゲームセット。ここから同点に持ち込むことだって不可能に近い。

しかし、4失点をしたあと、さらに応援の歌が強くなっていった。歌声の中には、選手達を決して落胆させてはいけないという強い意志が込められていた。胸の奥が熱くなっていく。いつの間にかぼくの周りも歌うサポーターばかりになっていた。

バーモバモバモ東京……

そして、2分後に平山が1点取り返す。

その時の歓声は忘れられないものとなった。大きな感動の渦の中心に、ぼくは巻き込まれていた。しかし、歓声が上がるのは一瞬だった。時間がない!

バーモバモバモバモ東京……

残り時間は10分、3点ビハインド。時間がない。選手達はゴールしたボールを持ち、センターサークルへと走っていく。

その光景も胸を熱くした。冷静に見ていられなかった。試合を客観的に分析することなど不可能だ。最後の最後まで諦めずに全力を尽くす選手達を応援したいという気持ちが、心の奥から芽生えてきたのが感じられていた。

この気持ち止まらないぜ……

途中まで鹿島の選手ばかり注目していたせいでFC東京の選手は、誰がどこにいるのかさっぱりわからなかった。しかし、それすらどうでも良かった。誰でもいいから、何でもいいから、あと10分頑張ってくれ!!!そういう気持ちになった。

オオオオオオオ オオオオオオオ オオオオオオオ 東京……

残り時間の間、FC東京も猛然と反撃をしていたが、これ以上相手のゴールを崩すことはできなかった。サッカーなんてそんなもんだ。どれだけ頑張っても得点するのは簡単ではない。しかし、最後の瞬間まで戦意を喪失せずに勇敢に戦っていた。

試合後は、「バカヤロー、金返せ-!」というようなやり取りがあるのかと思えば、そんなことは全くなくて、選手達の健闘を称える歌が響き渡っていた。

観客達は、食べる、飲む、そして歌う。

心が高揚し、数万人のサポーターの気持ちが溶け合い一つになっていく。この気持ちよさは、テレビでも味わえないし、他のレジャーでもそう簡単に味わえるものじゃない。

サッカー観戦に外れなし。負け試合でもこんなに良い気持ちになれるとは。これで接戦を制したりとか、優勝したりとかしたら、どれだけ嬉しいのだろうか。どれだけ幸せなんだろうか?

買わないくじは当たらない。その幸せを得るためには、賭け金を支払う必要がある。チケットを購入しスタジアムに行ったり、グッズを買ったり、アウェーの試合結果をじりじりしながらチェックしたり、チャントを大声で歌ったり、雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ、ライバルチームへの憎しみを燃やしたりしながら生きて行く必要がある。

思えば、これは世界レベルの話なのだ。世界中の多くの都市で、数えるのも面倒なほどのたくさんの人が、お気に入りのチームを人生をかけて応援している。

これはサッカーの問題じゃなくて、人生の問題なのだ。

スポンサーリンク

帰り道

サッカーとは何と巨大なスポーツなのだろうか、と考えながら帰途についた。

その途中、何度も何度もスタジアムの熱気を思い出した。

この気持ち止まらないぜ……

気付くと、スマートフォンでFC東京の次の試合をチェックしていた。残念ながらアウェーだった。しかし、またスタジアムに行きたい。その気持ちは、観戦した日から10日経った今でも消えていない。

FC東京のことがもっと知りたくなった。

色々と批判の対象になることは多いが、“東京”はぼくが生まれた街、育った街、愛する街なのだ。街というにはスケールが大きすぎるが、東京という名前をこう何度も何度も歌われると、心の奥底にあった大事な何かが呼び起こされるような気持ちになった。

地域への愛着が呼び起こされ、サッカーチームへの愛に変わっていく。自分の中にこんなことが起こるとは思わなかった。サポーターになるかどうかはよくわからないが、FC東京を応援したいという明確な理由が自分の中に出来てしまった。

東京を冠するチームには心を惹かれるものがある。バスケチームでも東京エクセレンスというチームが最近無性に気になる。東京サンレーブスも気になるし、最近Shuji Takei選手を中心に東京ユナイテッドというクラブチームも出来てこれも気になっている。ぼくにとって“東京”というのは特別な言葉なんだろう。

(追記:東京ベルディを忘れてました。)

自分はどのチームにも傾倒することはないだろうと思っていたが…… いや、まだ傾倒したとは言えないが……

次からも日程の都合がつけばスタジアムに行ってみようと思う。

結論

Jリーグを初観戦した結果、FC東京が大好きになった。

後書き的な文章 Jリーグ初観戦記のこぼれ話

2回目の観戦 前半後半

3回目の観戦 スタジアム編

 

 

この1試合から始まった一連のJリーグ観戦が一冊の本になりました。初観戦したのが2013年の10月で、そこから連続して10試合程度を観戦し、翌年に入ってから一気に書き上げました。

Jリーグに出会った時の気持ちを渾身の力で綴るためには、新鮮な気持ちを忘れていないうちに一気に取り組む必要がありました。だから、この本『サポーターをめぐる冒険』は、Jリーグに出会い、応援することを覚えた時の気持ちを冷凍パックして保存したものです。

今のぼくとは考え方が変わっているところもありますが、あの時そう感じたことは紛れもない真実です。この本の続編が書けずにずっと苦しむことになるというおまけもつきましたが、「サポーターのことを書いてくれてありがとう」とお礼を言ってくれる方もいて、いろいろなつながりが生まれたという意味でも思い出深い本、宝物のような本です。

その気持が通じたのか、サッカー本大賞2015の大賞もいただきました!

今のぼくは、ゆるいJリーグのファンとして、あるいはFC東京のゆるすぎるサポーターとして、気ままにサッカーを楽しんでいます。

サッカーのことはTwitterで呟くこともあるので、是非フォローお願いします! 

中村慎太郎 (@_shintaro_

アーセナルに取り憑かれた男の話です。『サポーターをめぐる冒険』は、和製フィーバーピッチと言ってもらえることもあります(実は帯に書いてあります)。

-Jリーグ, サッカー論
-, , , , , ,

Copyright© はとのす  , 2024 All Rights Reserved.