Jリーガーについての詳細な分析本が面白すぎる


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日本サッカースカウティング127選手 ――世界基準で見る本当の実力――  ミケル・エチャリ 小宮良之

衝動買いだった。本屋で平積みされているのをみて、「ああ、これだよ!」と叫びながら購入。

つい1ヶ月前までJリーグにはあまり興味を持っていなかった。
「はとのす」を読みに来てくれる方はご存じかもしれないが、初観戦記を書いた(Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった。)。


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そこから、Jリーグのことを考えるようになって、無知と恥を晒しながら日本のプロサッカーリーグについて書き始めている。

しかし、Jリーグの記事はとびっきり書きづらい。とにもかくにも時間がかかるし、時間をかけても間違った記述をしてしまう。だからブログアップ後1時間は、炎上に備えてPCの前にいる。

(もっとも、意外にもJリーグ各チームのサポーターは間違えても怒らないことがほとんど。外部に対して非常に「ウェルカム」な態度の方が多い印象。)

ともかく、Jリーグ関係の記事に対して、書きづらさを感じる理由の一つは、「知識の少なさ」に由来している。ぼくの場合、フィールドにいる選手のほとんどが誰が誰だかわからない状態で観戦しているため、取れる情報が少なすぎる。

本当は、誰がどこで活躍したというようなことも「少しは」書きたいのだが、かなりの高確率で選手を取り違えているので、怖くて書けないという情けない事情がある。FC東京についてはだいぶわかってきたのだが、それだって最近のことだ。

海外サッカーをテレビで見ると結構わかるんだけどねぇ……

ところで、なんで海外サッカーの場合はわかるのかというと、選手の特徴、長所や欠点などをちゃんと把握できているからだろうと思う。というのは、そういう分析記事が海外サッカーの場合にはメディアをみると簡単に読むことができるからだ。

その選手がどういう特徴を持っているのかを容易に知ることができる。

一方で、Jリーグを伝えるメディアの場合は、選手の能力評価はあまり重視されていないような気がしている。

例えば、手元の選手名鑑を参照してみる。

【レアンドロ・ドミンゲス】
11年のMVP、2年連続ベストイレブンに選ばれた柏のキャプテン。Jリーグ随一のテクニックで今季も観客を魅了する。

【柿谷曜一郞】
今季から念願だったC大阪栄光の背番号8を着ける「第4代ミスターセレッソ」。徳島への期限付き移籍を経て復帰した昨季は、自身初のふた桁得点となる11得点を挙げ、名実ともにC大阪の中心選手へと成長した。「天才」と称されるボールテクニックはJ屈指で、一見の価値あり。下部組織出身で、サポーターから注がれる愛情はチーム1。

【長谷川アーリアジャスール】
正確な技術と戦術眼を武器にボランチ、トップ下、サイドハーフをこなすポリバレントなプレイヤー。横浜から加わった昨季はゼロックススーパーカップの柏戦、ACLのブリスベン戦と、序盤で連続ゴールを記録し、サポーターの心を鷲掴み。異例の速さでチャント(応援歌)が作られた。5月には日本代表にも選出され、飛躍のシーズンを送った。

J1&J2選手名鑑 2013 (NSK MOOK)より引用

こういった記述も「何故愛されているのか」「人気がある選手かどうか」などを知るためには悪くないとは思う。初心者でもわかりやすいように、なるだけ難しい言葉を使わないように配慮しているのが伝わってくる。これは、これでありだと思う。

一方で「攻略本を読む楽しさ」的なものがない。

「ゲームを実際にやるよりも、攻略本をみて誰が最強キャラなのかを考えるほうが楽しい」

こういう感覚、わかるだろうか?よし、わからない人もいるだろうからもう少し掘り下げたい。

例えば、柿谷が「天才」と呼ばれて、ボールテクニックが高いことは上記の記述でわかる。しかし、天才とは何によって天才なのかがわからない。ファーストタッチが上手いのか、縦に抜いていくドリブルが上手いのか、キックが繊細なのか、ボールテクニックというだけなら何とでも解釈できる。

しかし、ぼくが本当に読みたいのは何がどう上手いのかという分析なのだ。「右足は上手いが左足は下手。背中を向けた状態での視野は狭いが、広いスペースで前を向いた時は破壊的な攻撃の起点になる。」こんな感じ。

こういった分析記事が、海外サッカーの場合には多いような気がしている。というよりも、こういう記事ばかりというように思える。海外サッカーの場合は、選手への愛着はあまり大きくならないのかもしれない。遠い空の下でやっているリーグだし、選手達は基本的には自分たちの人生と関係がない。だから、純粋に能力で評価し、能力を愛するしかない(もちろん例外はある)。

一方で、Jリーグの場合は、すぐ間近に選手がいていつでも会いに行ける。例えば、大雨が降れば、自分だけではなく選手も一緒に濡れてくれる。「あ、洗濯物干したままだった!」とあなたが感じた時、もしかしたら長谷川アーリアジャスールも同じ事を思っているかもしれない。圧倒的に共感しやすい。だから、選手能力についての分析がなくても、記事が成立する。

もちろん、Jリーガーたちの詳細な分析記事も探せばどこかにあるのかもしれないが、なかなか見つけられずにいる。だから、誰がどういう能力の選手なのかが把握できない。もちろん、記述があったからといって盲信するわけにはいかないが、「叩き台」があるとないとでは理解の速度がだいぶ違う。

……前置きが長くなったが、ニワカJリーグファンのぼくはJリーガーの能力について分析した記事を求め始めていた。そこで出会ったのが、『日本サッカースカウティング127選手 ――世界基準で見る本当の実力――』だった。

偶然本屋で見かけて即購入。

この本の特徴は、あのシャビ・アロンソを見出したという指導者ミケル・エチャリが、Jリーグの試合をスカウティングし、選手について批評を加えていることだ。共著の小宮さんも、批評には関わっているようだが、読んでいる感じではエチャリの意見のウェイトが大きいように思われた。

批評というのは悪口ではなくて、「良い点と悪い点がどこにあるか点検する」ということを表している。この本では、非常に良質の批評を読むことが出来る。

海外の指導者からみて、日本人選手はどういうレベルにあるのか、何が長所で何が欠点なのか。世界に通用するのかしないのか。Jリーガー対する容赦ない批判はありそうでなかったのではないだろうか。

この本の構成は5つに分かれている。

・日本代表の戦術分析
・日本代表についての分析(遠藤、香川など)
・次世代の日本を支える若手についての分析(権田、鈴木大輔、柴崎など)
・Jリーグの選手についての分析(中村俊輔、豊田陽平など)

・最近の日本代表の試合を分析、未来への展望

日本代表についての分析は、目新しく感じなかった。というのも、海外の指導者が日本代表の戦術や選手について批評した記事はこれまで何度か目にしたことがあったからだ。とはいうものの、そういったタイプの記事を目にしたことがない人にはお勧めできるし、本田や香川がどう評価されているかを抑えておくと、他のJリーガーの位置がわかるので必読の箇所でもある。

選手の分析は溜まらなく面白いので一つ紹介したい。

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【長谷川アーリアジャスール】
攻撃的MF。体格は良い。右利き。基本的なテクニック、ボールを運ぶドリブル、プレービジョンはいずれも申し分ない。とりわけ、バイタルエリアに入ったとき、そのテクニックとビジョンの融合が生きる。ハイプレッシャーの中でも連携しながら守備を崩せる能力は素晴らしい。左から中央に入るプレイを得意としており、サイドバックとセンターバックの間に容易に侵入する。
F東京のオフェンスを、東と共に引っ張り、ザッケローニ監督が代表に招集しているのも不思議ではない。

こんな調子の分析が127人分並んでいる。

エチャリが特に高い評価を下しているJリーガーは、中村俊輔、高橋秀人、山田大記。次点で、権田、森重、田口、青木、長谷川アーリアジャスール、斉藤、工藤壮人、豊田、工藤浩平など。

そして、Jリーガーで最も高い評定を着けられたのが、大久保。フットボーラーとしてのセンスは世界レベルでみても傑出しているのだそうだ。

個人的に気になったのは、現在V長崎でプレイしている幸野志有人選手。パパの書き込みを毎日みているので、何か応援したくなっているというのもあるにはあるのだが、現在J2に所属している若手選手まで分析しているという点が面白いと感じた。また、分析内容も若手だけに悪い点も書かれているが、「立て続けに才能の片鱗を見せたのは意外だった。」と思わせぶりな批評を加えている。

1年後くらいに読み直してみても面白いかもしれない。

ワクワクするような批評が読めるこの本はとってもオススメ!!!

最後に誰のスカウティングが読めるのかを列挙しておく。

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代表編
GK
 川島、西川 SB 長友、内田、駒野、ダブル酒井、槙野、安田 CB 吉田マーヤ、今野、栗原、伊野波、水本、岩政、森脇 ボランチ 遠藤、心を整える、細貝、高橋秀人、阿部、柏木 攻撃的MF 本田△、香川、清武、乾、ケンゴ、大津、宮市、藤本、宇佐美、松井、家長 フォワード 岡崎、前田、李、ハーフナー・マイク、佐藤寿人、森本。

次世代編

GK 権田、安藤 SB大岩、比嘉 CB 鈴木大輔、濱田 ボランチ 山村、山口螢、扇原、村松、柴崎、米本、山本 攻撃的MF東、斉藤、水沼、大前、高木フォワード 永井、大迫、杉本、指宿、小野祐二。

Jリーグ編
「横浜F・マリノス」 小林、中町、富澤、中村俊輔
「湘南ベルマーレ」 大野、永木
「名古屋グランパス」 田中マルクス闘莉王、田口
「ジュビロ磐田」 山田大記
「ベガルタ仙台」 林、赤嶺、石川、松下
「ヴァンフォーレ甲府」 福田、青山、井澤、柏
「清水エスパルス」 林、石毛
「大宮アルディージャ」 青木
「大分トリニータ」 高木和道 森島康仁
「FC東京」 徳永 森重 長谷川アーリアジャスール
「セレッソ大阪」 柿谷曜一郞 南野
「アルビレックス新潟」 三門、田中亜土夢
「サンフレッチェ広島」 青山、森崎兄弟
「サガン鳥栖」 藤田直之、豊田、高橋
「鹿島アントラーズ」 曽ヶ端、青木、野沢
「川崎フロンターレ」 大久保、山本
「柏レイソル」 菅野、増嶋、工藤、谷口
「ガンバ大阪」 倉田
「京都サンガ」 安藤、秋本、工藤、山瀬、駒井、宮吉、久保
「ジェフ千葉」 高橋、兵藤
「コンサドーレ札幌」 奈良、上里
「徳島ヴォルティス」 柴崎
「ヴィッセル神戸」 岩波、小川
「Vファーレン長崎」 幸野志有人
「東京ヴェルディ」 中島
「アビスパ福岡」 古賀、坂田、中原