報告&感想:西部顕司「戦術リストランテⅡ出版記念トークイベント」サッカー戦術ナイト~出張リストランテ


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サッカーの戦術解説なら日本一のジャーナリスト西部謙司さんの講演会に行ってきた。難解でマニアックな講演かと思ったが、“にわかサッカーファン”の私でも理解できるように説明してもらえたので、大満足だった。

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戦術リストランテⅡ出版記念トークイベント
サッカー戦術ナイト~出張リストランテin阿佐ヶ谷ロフトA~

 

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出演

西部謙司(サッカージャーナリスト)
北健一郎(スポーツライター)
浅野賀一(footballista編集者)

 


 

内容

・前半
「日本代表編」
イベント前日に行われたW杯最終予選“日本vsヨルダン”のレビュー。
西部さんの意見を要約すると日本の積年の弱点である「セットプレイで高さがない」ことと「広いスペースをドリブルされると止めれない」ことの二つが出てしまった試合とのことだった。

二つの失点シーンをビデオを観ながら詳しく解説してもらった。特にコーナーキックでの失点のメカニズムは面白かった。

ヨルダンの10番が大きくてヘディングも強く、またファーでゴールを狙っているという情報があったらしく、日本はファーを警戒していた。ヘディングに強い吉田、今野、前田がファーで警戒していた。一方、ニアにはゴートクと遠藤がいて、中央はキャプテン長谷部と岡崎がゾーンで守っていた。

コーナーキックで危険なのはニアから中央までのエリアらしい。キーパーは止めに行きづらいし、相手が触れば入ってしまう。だから、普通はそこを厚く守るらしいのだが、今回はファーを警戒し過ぎて中が薄くなっていた。長谷部は180 cmちかくあるし、岡崎もヘディングは強いはずなのだが、ディフェンスの専門家ではないので隙が出てしまったのだろうか。ただ、日本代表に高さがないのは今に始まったことじゃなくて、どうしてもコーナーキックでは危険に晒されてしまう。

そこで、どうやって守っていくかが面白いところでもある。誰が危険な相手なのか、その選手はどこにいて誰が守っているのか、キッカーはどこを狙っているのかなどを、これからはよく観察してみようと思う。

しかし、国際親善試合のフランス戦では何本もコーナーキックを迎えながら守りきった。これは何故できたのだろうか?CFに入っていたハーフナーマイクが利いていたためだろうか? 質疑応答の際に訪ねてみたのだが、「フランスの決定力不足」に加えて「確かにハーフナーが利いてた側面もあるかもね」という感じだった。少し前のことなので、選手の配置などは覚えていらっしゃらなかったのかもしれないが、分析方法を教えて頂けたので今度もう一度観直してみようと思う(あの試合は大好きでもう5回は観ている)。

他にも「ザックは3-4-3を導入するか」「大津を使うなら1トップ?SH?」「本田の1トップや0トップは有効?」「トップ下は香川と本田のどっち?」など。

日本代表で0トップをやるのはなかなか難しいというお話は非常に興味深かった。
0トップとは、本来1トップをマークするべきセンターバックに誰もいない空間を守らせる戦術のこと。0トップをする場合は、SHの二人が高い位置で張ってラインを押し下げる機能を果たさないといけないらしい。しかし、日本のSHはウィンガータイプではないため、中に入ってきてしまう。だから、ラインが押しあがってくるので、0トップが機能しない。

バルサの例も出しながらの解説は非常に分かりやすかった。今まで何を読んでも0トップの肝がわからずにいたので、非常にすっきりした気分になれた。

・後半
「海外サッカー編」
全ては紹介できないのでダイジェストで。

「FCバルセロナ」
メッシはどこでパスを受けたいのか。何故CL 1stLegでミランはメッシを止めれたのかについて。

「マンチェスターユナイテッド」
香川の立ち位置。後2年が正念場。ファーガソンの監督としての特徴。

「ドルトムント」
センターバックがビルドアップしてくるチームに対する前線の守り方。アヤックス戦では、ボランチとCBのパスコースを切った。一方レアル戦では、セルヒオ・ラモスとシャビ・アロンソにきっちりマークをつけて、ペペを放置した。

「ユベントス」
ユーベの3バックシステムとピルロの使い方。

「サンフレッチェ広島」
5バックに近いシステム。森保監督になってから試したこと。

「浦和レッズ」
ミシャ監督の練習や指導について。浦和は優勝できるのか。

「ACL」
何故Jのクラブは勝てないのか。Jはどこへ向かっていくのかについての考察。


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感想

西部さんの著書はまだ2冊しか持っていなかったのだが、『footballista』の連載“戦術リストランテ”は毎回熟読していた。
サッカーの戦術は非常に複雑で完全に理解する難しい。しかし、サッカーを楽しむ際に、戦術を考えることほど面白いことはないのも事実だ。

誰をどこで使って、どうやって相手のディフェンスを崩して行くのか。
あるいは、オフェンスに対して、どうやって守っていくのか。
試合をみての表面的な解釈や推測は、ど素人でもできるが、
それが正しい保証はない。

本当のことはお互いのチームの監督しかわからないと言う人もいる。
もし、双方のチームの戦術について可能な限り理解を深めていこうと思ったら、選手の能力や癖をはじめとして、チームの歴史、リーグの特徴、コーチ、トレーニングの傾向などなど、ありとあらゆることを知っている必要がある。

講演会の後、西部さんにサインを頂いた際に「最初に好きになった選手の名前を書いて下さい!」とリクエストしたところクライフベッケンバウアーと書いて頂いた。西部さんの“説得力”はこういうところからも生まれているように思えた。

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また、戦術リストランテは内容が非常に高度でマニアックとすら言えるにも関わらず非常に読みやすい。それはレイアウトが優れているためでもあるのだが、質疑応答形式になっているのも大きい。その質問をしているのは、この日参加していた編集者の浅野賀一さんなのだろう。これから読む時は顔を思い浮かべてしまいそうだ。

今回は西部さんが中心の講演会だったので若干控えめではあったが、北健一郎さんは、サッカーの奥深さを知るきっかけになった名著“なぜボランチはムダなパスを出すのか? ~1本のパスからサッカーの”3手先”が見えてくる~ ”の著者。この本は、サッカーに興味がある人は絶対に読んだほうがいい本。特に遠藤が現役のうちに。いずれブログにレビュー記事を書こうと思う。

「試合の勝敗に対して、戦術は多くても20%程度しか影響しない」と、戦術ライターと称されることすらある西部さんは仰っていた。
けど、その20%が1番面白いところなのだ。
基本的には、良い選手を集めればチームは強くなる。
だから、金のあるところほど強い。レアルしかりバルサしかりマンチェスターUしかり。

しかしながら、メガクラブ同士の勝敗には戦術は大きく影響してくる。
また、ジャイアントキリングも時に戦術の成果なのだろうと思う。
サッカー熱が沸騰しそうになってきた。楽しい講演会だった。

こういうのまたやってくれないかなぁ……次も絶対に参加しようと思う。

 

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