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【サポーターをめぐる冒険のおまけ】 第一章 Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった

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『サポーターをめぐる冒険』お読み頂けたでしょうか。まだの方もいると思いますが、以前から企画していた「おまけコンテンツ」を少しずつ書いて行こうと思います。

基本的には既に読み終えた方を対象としていますが、ネタバレ的な要素は少なめにしようと思っています。ブログから現れて、書籍を残し、そしてブログへ戻っていく。こういう試みをしている人は、あまりいないのではないかと思います。

ブログは仕事とは言いがたいのでブロガーと名乗ってはいないのですが、ブログ書きであることは間違いありません。そんな自分だけが出来る表現世界を試していきたいと思っています。

さて、今回は第一章「Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった」についてです。

「登場したチャント」
サマーライオン FC東京

タイトルの通り、ぼくの運命を変えた記事「Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった。」が元になっています。

『サポーターをめぐる冒険』が始まったのは、この日国立競技場のゲートを潜り抜け、スタジアムに吹き抜ける風を感じた時からです。そのため、すべてはこの章から始める必要がありました。

しかし、ブログ記事をそのまま載せるわけにはいきません。

ブログの文章と書籍の文章は、本質的に全く別のものだからです。

ぼくは、ブログ記事でも「比較的書籍より」の表現を使っています。例えば、「w」や「(笑)」や「(マテ)」などは使いません。


※文例※
いやー昨日は飲み過ぎて朝起きたら酷かったw でも、迎え酒が必要だと思ってビールを飲み干してみる(マテ


他にも、文章全体で「文体の統一」をすること、論理の狂いがないように何度もアウトラインを見直すこと、その他企業秘密なアレコレな工夫をしています。しかし、ブログで書く文章と、書籍の文章は本質的に全く違っています。

ブログの文章は、「刺激的」で「扇情的」であることが求められます。パソコンのモニターに向かうとき、携帯電話の画面を眺めるとき、人は少なからずイライラしているものだと思っています。というのも、モニターというのは発光体であるため、長時間文字を追うと目が疲れるようになっています。

だから、ブログの場合には「今すぐにでも読むのをやめてモニターから目を離したい読者」との戦いが待っています。戦術としては、「タイトルを扇情的にする」「冒頭に工夫をする」「短い文章にする」などが考えられます。

Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった。」も同様で、非常に扇情的なイントロダクションになっています。

そして、煽った感情をうまくコントロールして最終的な着地点まで導いていくという非常にテクニカルな文章です。この文章は9000字もあります。これだけ長さの文章がこれだけのアクセスを得る(現在17万以上)というのは非常に珍しいことだと思います。有名ブログなら別かもしれませんが、完全に無名のブログでしたからね。

ブログ版の文章は、文章でありながら「プレゼンテーション」に近いものがあります。イントロダクションで捕まえた人の心を、ギュっと捕まえたまま自分のストーリーに引き込んでいき、最終的な着地点へと導いていきます。偶然書けたという要素はあるのですが、この文章は長い科学研究生活の果実だと思っています。異議がある方もいると思いますし、大幅に崩してはいますが、ぼくにとっては非常に研究者的な色の強い文章です。

さて、書籍版の場合は同じ書き方をするわけにはいきません。
まず、文体を変えました。どこをどう変えたのかというのはナイショですが、読み比べてみると大きく異なっていると思います。

そして、今度は12万字の大きな物語で、第一章はその冒頭に過ぎません。役割が違います。

『サポーターをめぐる冒険』は、Jリーグのサポーターだけに売って金儲けをするために出した本ではありません。 

この本は、今までJリーグに興味を持っていなかった人、興味はあったけどスタジアムには行ったことがない人、あるいはサポーターに大して偏見がある人、そういった人達に届かせる必要があります。そのためには、Jリーグについてあまり知らない人がサラリと読めて、物語への第一歩を踏み出せるようにする必要があります。

これは非常に難しいタスクで、どこまでうまく書けたかは自分ではわかりません。しかし、この章を書き換える作業に2週間以上費やしました。後で書きますが、第一章と第二章はセットになっていて、ここでJリーグに興味を持っていなかった人を惹き付ける必要がありました。

物書きというのはついつい「自分の色」を出したくなるものだし、「俺はすごい人間だ」という気持ちがどうしても文章にうつってしまうものです。ぼくの場合には、この第一章の元となったブログ記事は「出世作」とも言えるものなので、ついつい誇らしい気持ちが顔を出しそうになります。

しかし、それは、Jリーグのことも、もちろん「はとのす」や「中村慎太郎」のこともよく知らない人にとっては不愉快なノイズでしかありません。

そういった臭気を出さないためにも、「全身全霊を込めて自分を殺す」というややこしい作業をしなければいけませんでした。これについて語り始めると長くなるので簡単に言うと「誰からも受け入れやすい淡々とした文章」にする必要がありました。

今思うと恥ずかしい話ですが、「ぼく」はこの物語の主人公です。そうでありながら、「ぼく」が個性を持った人間になるのはもう少し後のことです。

第一章はこの物語を貫くテーマを散りばめながらも、あっさりと始まってあっさりと終わっていきます。あくまでも序章に過ぎないし、大切なのは「一見さんを逃がさない」ことなのです。

ところで、この時の試合が、FC東京の勝利であったり、引き分けであったりした場合には、ぼくはどう感じたのだろう。『サポーターをめぐる冒険』としては、この情けない敗戦がベストのストーリーであったように思う。いや、もしかしたら、鹿島のほうに共感して鹿島アントラーズ目線での物語が始まっていたかもしれませんね。

何が起こるかはよくわかりません。しかし、スタジアムにいけば何かが起こるのです。

写真紹介

国立競技場の周りをうろついていた時に撮影した写真。かなり暗かったのでぼけている。
並んでいる人が想像をはるかに超えて多く活気があったことに衝撃を受けた。文章にするにはちょっとマニアックな視点なのだが、この時受けた衝撃は非常に大きかった。それがあったからこそ、「もしかしてJリーグってすごいんじゃないのか?」という意識を持ってスタジアムに向かうことになった。


はじめてスタジアムに足を踏み入れた瞬間。突然空気が動き始めて、風が吹いたように感じたのを覚えている。一般的に風が吹くのは物語が始まる合図とされているが、国立競技場に吹いた一陣の風と共に、『サポーターをめぐる冒険』という物語も始まったのであった。


鹿島アントラーズのゴール裏を座席から眺める。遠目に見ると、白い旗が何機もうごめいているのが見えた。


観戦はこのあたりから。
見やすいはずの座席からみたのに、ピッチで起こっていることがいまいちよくわからなかったというのが『サポーターをめぐる冒険』の重要な出発点。

以上。
章によって濃淡はあるだろうが、このような形で「おまけコンテンツ」を作って行きたいと思っています。

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