東大に11年在籍した後、タクシードライバーになりました

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書評

司馬遼太郎の文庫を求めて、本棚を物色されながらの対話 

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物書きタクシードライバー
中村慎太郎

東京生まれ、東京育ち。タクシー乗務の合間にブログ記事やサッカー旅記事、タクシーエッセイなどを書いている。

司馬遼太郎は俺の青春!!









ぼくが代表しているOWL magazineの若手ライターつじーが自宅に現れることになった。というのも、ひょんなことから司馬遼太郎の話が出たからだ。

思えば10年以上読み直していないので、あげてもいいかなぁという話をしたら、早速つじーが取りに来た。この記事では、若手ライターつじーとぼくが本棚の前で話したものを、そのまま文字起こししている。

つじーのTwitter





慎太郎:それではつじーが到着しました。これから本棚の撤去をしてこうと思ってて、文庫本だったら全部あげるよ。貴重なやつがもしあったら渋るけど(笑)ただ、想像以上にね、司馬遼太郎のクオリティが低かった。レトロすぎる。

<写真を撮り忘れたのである!!でも色はほとんど焦げ茶です>

つじー :これは年期が入ってますね。でも『竜馬がゆく』は新装版なんですね。良かった。『世に潜む日々』は面白いですか?

慎太郎 :この本はね、吉田松陰からの高杉晋作という流れで主人公が変わる小説なんだけど、個人的に好きなのは冒頭で司馬遼太郎が出てくること。司馬遼太郎が山口にタクシー乗ってるとこから始まるんだよね。歴史小説としてあるまじき構成をしていると思う。高校生の時初めて読んで、買った本間違えたかと思ったよ(笑)

つじー:こういう書き方面白いですよね。たまにありますね司馬遼太郎の作品で。クシーの運転手に話しかけた話とか何か地元の方と話してますとか。

慎太郎:そうそうそう!!そこですよ。そこが、ライターに学んで欲しいことでもある。ライターは裏方の黒子みたいなところがあるので、その仕事をしているうちに段々と自分の色が出せなくなっちゃうのよ。新聞記者にも言えるかもしれない。

そういえば司馬遼太郎は元新聞記者だったね。本業は黒子として仕事しないといけないんだけど、ほんのちょっとだけでも名前を出していかないと、名前の売りようがないからね。

つじー:『竜馬がゆく』の2巻から4巻はどこにあるんですね。

慎太郎:うーん、どっかに散っているかもしれない……。発掘して下さい。発掘したもの持って行っていいから。

つじー :あ、司馬遼太郎じゃないんですけど、『2050年前の時代』ってこれ、何かの時に面白いっていってませんでした?

慎太郎:ああ、これ面白かったな。日本が江戸時代に戻ったらというような「ifの未来」で、実は江戸という都市が、すごくよく出来たリサイクル都市だってことがわかる作りになっている。これはつじーも参考に出来るかもって言っていた本だよね、これは、あげるよ。

つじー:ありがとうございます!!あとは、何がいいですかね。

慎太郎:やる気になっとるな(笑)例えばそこにある司馬遼太郎の『北斗の人』も面白いよ。千葉周作が主人公の剣術もの。「夫剣者瞬息心気力一致(それけんはしゅんそくしんきりょくのいっち)」って高校生の時に机に書いてた(笑)『北斗の人』は政治色の少ない歴史の話だよね。

つじー:『梟の城』はエンタメ寄りですよね。デビュー作でしたっけ。

慎太郎:ちょっと重厚な感じだよね。柴田錬三郎かって!もう少し後になると、すぐに司馬遼太郎おじいちゃん出てきちゃうから(笑)。でも、そういうゆるさがあるほうががぼくは好きだなぁ。どうでもいいけど柴田錬三郎が書いている謎の青春小説があって、それがちょっと面白かった。

つじー:ぼくは山田風太郎なんかが好きですね。

慎太郎:あ、知らない!

つじー:歴史はちゃんと調べてるんだけども、架空の物語をうまく入れ込んでくる感じです。しかし、『竜馬がゆく』の2〜4巻はないですね……。

慎太郎:えー、うーん。そんなわけがない。一番下の段は?

つじー:一番下村上春樹です。

慎太郎:ふーむ(村上春樹はつじー向けじゃないよな)。

つじー :『酔って候』ならありました。

慎太郎:あ、それは面白いよね。その本は、Jリーグ記事にも応用利くかもしれない。

つじー:Jリーグですか?ちょっとピンと来ないのですが。



慎太郎:そう言うとちょっと大げさかもしれないな(笑)。1つの短編の中で、伊予宇和島とか土佐高知とか1つの地域を取り上げているという構造が、Jリーグっぽいなぁと思って。例えば、宇都宮徹壱さんの新著『サッカー風土記』は同じ構造をしている。

つじー:思えば『サッカー奥の細道』『股旅フットボール』も同じかもしれませんね。

慎太郎:Jリーグではないけど、『フットボールの犬』もそうだよね。逆に考えると、Jリーグ全体を横断的に総論として扱う書き口が『竜馬がゆく』なんだよね。もちろん、フィクションも混ざっているし、土佐の話は多いんだけど、幕末史の主要な出来事が一通り紹介されている。

つじー:なるほど。勉強になります。

慎太郎:あ、そこにある『峠』はつじー向きかもしれないね。ざっくり言うと、やたらと賢くて行動力があるじいさんがはっちゃける話。

つじー:ああ、河合継之助ですよね。

慎太郎:うむ……(知ってるんかい!)。

つじー:……(無言で鞄に『峠』を突っ込む)。

慎太郎:——。

つじー:『燃えよ剣』はどういう評価ですか?

慎太郎:『燃えよ剣』はすごく面白いけど、エンタメだよね。ぼくの中では、最初に読む本。

つじー:そうですね、読みやすいですしね。

慎太郎:新選組にはファンがとても多いし、ぼくも雰囲気は大好きなんだけど……。まぁこういっちゃなんだけど、活動に深みがないんですよ。人斬りをするという異常性はあるものの、下っ端の警察官の話みたいなものだから。組織運営自体はクレバーだったかもしれないけど、時代を見る目は皆無だったわけだしね。そこに美学はあるし、剣客集団としても死ぬほどかっこいいし、ぼくも大好きなんだけどね。

どうでもいいけど、長倉新八がじいさんになって北海道に行ってからのエピソードが好き。

つじー:どんなのですか?

慎太郎:腰の曲がったじじいなんだけど、喧嘩になったらチンピラを投げ飛ばしたみたいなやつ。くぐった修羅場が違うってやつだよね。事実なのかまでちゃんと調べてないけど。幕末と戦国はある種ファンタジー化しちゃうときあるからね。

つじー:なるほど……。ところで、これ以降の土方歳三の書かれ方を見てると、いかに『燃えよ剣』を超えていくかみたいな書き方をしているような気がします。

慎太郎:土方歳三の描写は見事の一言だよね。司馬遼太郎って人間愛の人だからさ、好きになった人を調べまくって、さらに好きなとこ見つけてから書くから、キャラが立つんだよね。『新選組血風録』も面白い!

キャラ立ちのさせ方がしっかりしていて、何というか例えばラノベみたいな味つけというとわかるかしら。だからとても読みやすいんだよね。

つじー :『功名が辻』も面白いですよね。

慎太郎:お、読んだことあるのね。これは数少ない女性向けの司馬遼太郎作品だね。女性が主役格だから。

つじー:はい。『十一番目の志士』どうでしたか?確かに架空の志士が出てくるやつですよね。

慎太郎:そうそう、幕末ものなんだけど、個人的には全然面白くない(笑)司馬遼太郎の歴小説は半分ファンタジーなんだけど、やっぱり半分は歴史的事実という体にしてくれないと読みづらい。

つじー:この『読むクスリ』というのは何ですか?

慎太郎:ああ、これはね。いい本だよ。ぼくの知的な下地を作ってくれた本。元々父が持っていたのを本棚から引っ張り出して読んでたんだよね。

つじー:どんな本なんですか?

慎太郎:そうだね。色んな人に話を聞きに行くんだけど、昭和のビジネスマンがどうやって成功してきたのかがわかって面白いよ。

つじー:これも面白そうですね。

慎太郎:ああ、川口マーン惠美さんの本ね。この方はドイツ在住で、ドイツ分析がとても鋭くて面白いよ。例えばさ、ドイツを理想国家みたいに扱う人っているじゃない。メルケルはすごいな、みたいな論調で。でも、住んでいる人からするとそう手放しで褒められたもんじゃないってことが書いてある。

例えば電車は時間通りに来なかったり、エコに配慮したせいで電気代がとても高かったり、残業はないんだけど不機嫌そうに働いている人が多かったりとかね。

一番面白かったのが現実主義に思えるドイツ人って意外と理想を追うのが好きな人達っていう話かな。理想を追って、理想を達成した時に、強く感動するみたいな人達らしい。だから極端に走りやすいってのもあるんだろう。
つじー :旧東ドイツの雰囲気も残ってるんですかね。

慎太郎:どうだろうね。そのへんは書いてあったか覚えてない。ぼくの世代だと東西ドイツに分裂していた時代はあんまり記憶にないから、そこまで関心ないのよね。

つじー:『謎解き村上春樹』という本もありますね。

慎太郎:あー、それはね15年くらい前に京都の河原町にある本屋で買った本だ。でも読んでないね(笑)

つじー :ここだけシンガポールだらけですけど、興味あったんですか?

慎太郎:それはだな。ハリルホジッチの時の日本代表が二次予選でシンガポールと試合をした時に行ったので、シンガポールについて書こうと思って資料で買ったんだけど、全然書いてないね。今からでも何とかなるから、しばらくコロナも続きそうだしOWL magazineでなんか書くかなぁ。

つじー:シンガポールはどうでした?

慎太郎:うーん。理想化されるんだけど僕はあんまりいい国じゃないと思って。住んだら別に悪いとこじゃないと思うんだけどね。元々なんか変な歴史的経緯である国だからさ。

あ、ライター関係だったら、『職業ブックライター』。参考になるかもね。

毎月一冊、十万字の本を出すすごく仕事が出来るライターさん。とはいえ、自著も出しているけど、裏方特化型といえるかもしれない。持って行く?

つじー:はい!(少しずるい目をする)

というわけで!

中村慎太郎

東京大学文科Ⅱ類→文学部倫理学専修.
東京大学大気海洋研究所でアワビ類の行動を研究する.
その後、フリーランスライター/作家/ブロガーとなり『サポーターをめぐる冒険』(ころから)を上梓。サッカー本大賞2015を受賞.

現在はタクシードライバーをしながら、旅とサッカーを紡ぐウェブ雑誌“OWL magazine”を主催.

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