BOOK LAB TOKYO とバラ色の日々よ


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灰色の日々が始まった。
いい年をして、新しいことを始めるのは大変なのである。

気ままな作家業を辞めずに、タスク量はそのままで、フルタイムの仕事を増やしたので、色々無理は出る。いや、作家としての仕事量はむしろ増やそうとしているくらいなのだ。

そんな中支えになっているのがあの言葉だ。
ぼくは基本的に文章にしたことは、一旦整理がついたものとして忘れていくので、どこで書いたのかは調べないとわからない。特にブログに書いたことは覚えていない。ただ、これについては何度か書いた覚えがある。

歌手の篠原美也子さんのご自宅にお招き頂き、おでんをつつきながら語ったときのことだ。昨年のクリスマスよりちょっと前だったかな?

宇都宮徹壱さんと千田善さんに同時に言われたのが35歳はまだ若く、どうにでも人生を変えられる年だということだ。

千田さんがオシムの通訳を始めたのは、40代の半ばだったそうだ。40過ぎてもまだまだ挑戦は出来るし、ましてや30代半ばなんて何だって出来るのだ。

そのすぐあとに、たまたま渋谷を歩く機会があり、時間を潰そうと思って入ったのがBOOK LAB TOKYOというカフェであり、書店であった。すぐに気に入って、求人を探して、最初はバイト。さらに気に入ったので、就職してしまった。

ネットベンチャー企業が運営する、出来たてホヤホヤの書店である。

仕事は面白いが、ストレスを感じていたことがある。それが、若い世代との付き合い方だ。20代半ばになると社会人として同じカテゴリーに入るのだけど、20歳前後の学生バイトとなると、もう宇宙人と交信しているような気持ちになった。

あっちもこっちがわからない。こっちもあっちがわからない。褒めようにも褒め方もわからず、怒ろうにも怒り方もわからない。あっちも、こっちも。

そんな状態で何とかやり過ごしてきたのだが、2,3ヶ月も経つとお互い慣れてくるものらしい。段々と距離感がわかってきたし、共通の言語が出来てきた。

4月は人が入れ替わる時期で、かつ、急病なども出たことで、お店の営業を回す上では苦労を強いられることが多くなった。もちろん、一時的なものではあるのだが、現場の人間としては必死にならざるをえない。

共に陥った危機の中で、若い力が爆発し、強力な支えとなってくれている。

年を取ると、エネルギーの総量は減るし、どこにどの労力を割くかが最適化されてくる。だから、1個体としてバランスが良く、揺るがない。

一方で若い人は、エネルギーの総量が大きく、同時に、力をもてあましている。だから不安定なところもあるが、ツボにはまったときの爆発力は凄まじい。

若さゆえの強さとあやうさ。
老いによる弱さと、老いつつあるからこその安定感。
うまく噛み合うことで強いチームが出来る。

サッカーでも、若手だけのチームはあまりうまくいかない。必ず経験豊富なベテラン選手が必要だ。逆にベテランばかりにすればいいわけではない。ベテラン中心のチームは、若さゆえの爆発力に、しばしば屈することがある。

ぼくと一緒に仕事したことが、彼ら、彼女らの人生にとって何になるのかはわからない。そこまで深く考えずに、同じ目的を見据えるチームメイトとして、信頼し、決して裏切らない。それだけでいいのだろう。

若いスタッフがなるだけフルパフォーマンスを引き出せるように、うまく環境を整えるのがおじさんの仕事。一方で、作家業の方ではペーペーの若手なので、こっちに全力を出し尽くさねばならない。

作家としてのぼくは、まだ何も成し遂げいない。書きたいことの1割も書いていないのだ。

日々の中に、平凡なルーティンを組み込むことで、刺激的な創作へとエネルギーが向けられるのではないかと期待して今の仕事を始めた。つまり、灰色の仕事時間と、バラ色の創作時間に分けるという考え方だ。

しかし、様相が変わってきた。最初に想像していたよりもはるかに大きなものが返ってきているような気がする。今、職場にいるスタッフ。最初は遠い遠い存在だと思っていたみんなが、とても親密で、頼もしいものに感じられている。後から考えると、この感覚こそが、ぼくが求めていたものだったような気がしてきた。

自宅に籠もって、育児と、孤独な物書きだけを続けていたら、決して得られなかったものが手に入りつつある。

灰色の日々が、バラ色に染まってきた。

一方で、執筆の方は順調ではない。
流石にこのタスク量をこなしながらでは、休日も体力回復だけにあてないと乗り切れない。

ここから巻き返そう。週の中、執筆に割ける時間は限られている。

ほんの一瞬だけで良い、あの日の若さを取り戻し、原稿へとぶつけよう。

20歳くらいの時に読んだロマンローランの『ジャン・クリストフ』
その冒頭にこんな言葉書いてある。

いずれの国の人たるを問わず、
苦しみ、闘い、ついには勝つべき、
あらゆる自由なる魂に、捧ぐ。

この言葉が、前よりも深く感じられるようになったように思う。

少し若さを取り戻したかもしれない。

夢……、いや、野望に向けて、走るのみ!!


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