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サッカー本大賞2017とBOOK LAB TOKYOと私。

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3月、ようやく終わる。
繰り返す。
3月、ようやく終わる。

渋谷にある書店BOOK LAB TOKYOで働き始め、3月からは本格的なダブルワークとなった。
こんなに仕事した月は今までなかった。
一体、何時間働いただろうか。ちょっと計算してみよう。

書店員業務は170時間。
時間外の調べ物やらメールやらで+10時間くらい。
作家業は、数えていないが100時間くらいか。

とはいえ、仕事後のビールが本当に美味しくて、一生の中で一番ビールを堪能出来た1ヶ月でもあった。

そして、限定された時間で原稿に向き合った。
研ぎ澄まされた意識の中から生まれる文章は、去年までよりもずっと上手に踊ってくれる。

時間管理はもう少しうまくやらないといけないが(これが1年続くと高確率で死亡する)、明らかに状況はよくなっている。

とはいえ一番ハードだったのが育児だ。とても楽しい時間だが、楽しいだけで終わるものではない。
土日のうち片方は子供に吸収されるので、週6の日程でこれだけやったことになる。

一番大変だったのが4歳児と2人で行った味の素スタジアムであった。

そうそう、あの日は、ブラジルの名門クラブ、コリンチャンスでコーチをしていた平安山さんと一緒に試合を見たのであった。そして、キックオフ2分で子供が試合に飽きたため、本当にハードな観戦となった。

試合後の飲み会で、カンゼンの坪井義哉さんに偶然会ったことから、サッカー本大賞2017が始まった。


ちょうどサッカー本大賞のノミネート作が揃ったあたりだったので、あの本が取るのではないかなどと勝手な論評を坪井さんに聞いて頂いていたときに不意に思いついた。

そうか。渋谷の書店でフェアをやったらいいではないか。

1,2月はバイト、3月から入社というような新米なので、サッカー本大賞フェアの棚を作ってもいいものかと非常に悩んだのだが、社内で調整しつつ作ってみた。

始動と始動を書き間違えるという致命傷を負いながらも、そこそこ拡散され、このフェア目当てで来店して下さった方も多かったようなのでやった甲斐があった。

とはいえ、これはただ並べるだけの棚で、正直もうちょっとやりようがあった。しかし、業務量を考えると、今年はこれで限界であった。文芸作品は扱っていないのだが、それ以外で面白い○○大賞があったらまた棚を組んでみてもいいかもしれない(ご存じの方がいたら是非教えてください)。

大賞が決まったこともあり、展示を変えて、もうしばらく展開しようと思う。そこで一工夫してみよう。角川の菊地さんに書店員としてやるべきことについて、非常に強力な示唆を頂いたので参考にしつつやってみたい。

お外に拠点が出来たことと、作家と書店員という2つの顔を持ったことによって、今までやってきたこと、今まで出会った人が、1つの流れにまとまってきたような強い手応えを感じている。


その手応えの最たるものが、受賞式であった。

翻訳サッカー本大賞として、『夢と失望のスリーライオンズ イングランド救済探究の時間旅行』(ヘンリー・ウィンター 著 山中忍 訳 ソル・メディア刊)

読者賞として『自分を開く技術』(伊藤壇 著 本の雑誌社刊)

そして、サッカー本大賞はダブル受賞であった。
思わず「おおっ!」と声を漏らしてしまった。

宇都宮徹壱さんの『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』

能町みね子さんの『「能町みね子のときめきサッカーうどんサポーター」、略して能サポ』

宇都宮さんは直前までBOOK LAB TOKYOにいらしていて、「書店員としての中村慎太郎」の取材をして頂いた。その時はサッカー本大賞のことは話していなかったのだが、大賞を取ったら記念講演をBOOK LAB TOKYOで開催するオファーをしようかなとうすらぼんやり思っていた(ハトトカへのご出演は決定しましたよ!)。

そこで能町さんですよ。能サポですよ。ダブル受賞ですよ。

『能サポ』的な見方は、ぼくの活動と非常に親和性が高い。だけど、絶対にかぶらない。同じ目線で、同じことをやっているのに、アウトプットがまるで違う。この世で一番話してみたい書き手の一人であった。早速、突撃。

「ダブル記念講演」をオファーして、日程が合えばというようなところまで一気に進めることが出来た。

これは、ぼくが書店員として、あるいはイベントスペースの運営者として働き始めたから出来たことだ。普通なら箱の確保とか集客とかの都合があるので、そう簡単には事が進まない。けど、ぼくの場合は、グーグルカレンダーをスマホで開けばいいだけなのだ。

お二人ともお忙しい方なので、実現できる保証はないものの、精一杯動いてみようと思う。


サッカー本大賞の受賞式と、その後のカンゼン編集部での飲み会はとても楽しい時間だ。過去の受賞作家として、みんなぼくのことを知ってくれているのでとても嬉しい。

作家活動をしていて一番嬉しいのは作品を読んでもらうこと。読んでくれている人のことは好きになるし、読もうともしない人とは深く仲良くなれる気がしない。

そんな中、サッカー解説者の倉敷保雄さんにもご挨拶することが出来た。なんと、ぼくの本を読んでくれていて、しかも非常に高く評価して頂いた。これは、サッカーファンとして一番嬉しいことなんじゃないだろうか。

短い時間ではあったが、倉敷さんとサッカーの解釈というか、サッカーをどう語るべきかについて話すことが出来たのはとても刺激的であった。面白いイベントのアイデアも後々浮かんだのだけど、こういうのも実現したら面白いなぁ(これは独り言)。

倉敷さんの名刺には肩書きがなかった。倉敷保雄さんというお名前だけで十分なのである。

うーん、かっこいい。


こうやっていろんな方とお話したことをブログに載せるのはあんまりやっていない。
人様の輝きを、自分をよく見せるために使うべきではないと考えているからだ。
とはいえ、たまにはいいかな。

Numberで書ける企画があったら是非送ってねみたいな酔っ払った勢いでのものすごい発言とか、生まれて初めて「少年マガジン」の名刺を頂いたりとか、面白いことがたくさんあった。

BOOK LAB TOKYOで行われた『巻き込む力』という書籍の刊行イベントで、翻訳者の津田さんが仰っていたことがとても深く刺さっている。

「単に飲んで終わりではなく、必ずビジネスの提案をしよう。それが、お互いにとってベストだ」

今までは作家業しか引き出しがなかったので、原稿を書くか書かないかという話しかなく、また、原稿に埋もれて大スランプだったので新たに何かを書くという話をする気にもならなかった。

しかし、今は、書店員として本を発注したり、フェアを展開したりすること、また、イベンターとして企画するという2つの引き出しが増えた。

単純計算で3倍、印象としては10倍くらい社交の場が楽しくなった。

審査委員長の佐山さんに、BOOK LAB TOKYOのことを話したら、今教えている大学生を連れて社会科見学みたいなことを出来ないかという話になったりとか……。つい最近まではこういった会話が生まれる素地が存在していなかったわけだから、お外に拠点が出来たことは本当に幸せなことだ。

3月の書店員としての仕事は、狂気の仕事量であった。
横浜FCサポで書店員の澤野さんが死ぬんじゃないかと本気で心配してくれたのだが、あの仕事量を自発的にやっていると知って、安心するのと同時に呆れていた。

書店部門のスタッフが少なくて、社内での理解を求めるのが難しいのだけど、同業の方にわかってもらえてこちらも幸せだった。通常業務しながら300冊選書するとか、鬼の所業ですよ。もっとも、ウェッブや書誌情報に基づいたゆるい選書も含まれる。

本気で選書した本をさりげなく置くというのが書店の究極系なのだろうか。
1つの答えは、荻窪の小さな本屋「Title」にあるような気がしている。

ああ、でも行く前に、後で本にまとめられるようにストーリーを作っておこう。職業病である。『書店員をめぐる冒険』という仮の書名をつけられるように活動をまとめておこう。

ちなみに、4月からは頼もしいスタッフが加入するので、とっても楽になる見込みです。

作家、書店員、イベンター、2児のパパ。

あ、そうそう。帰り際に、カンゼンの中の人に「育児の書き込みいつもみてます。」と言って頂いたのも嬉しかった。2歳の女の子がいるとのことだった。2歳児がいかに恐ろしいかを語りつつ、幸せな気持ちで家路に着いたのであった。

さて、そろそろ子供が起きてくるから土曜日はたっぷり遊んであげないとだな。

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