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ブラジルW杯紀行

ブラジルW杯紀行 第四話 「空の上からザックジャパンを思う」

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第三話 「小さな出会いを経て、少し前向きに気持ちになった」

目が覚めると、カンボジアの上空あたりだった。
時間は……

日本時間で言うと深夜2時を回ったところだが、眠っているわけにはいかない。これから行く場所の時間にあわせて行動をする必要があるからだ。目的地のサンパウロ時間で考えると、現在は14時なのである。

昼食後に軽く昼寝をしたというイメージを描きつつ、「ブラジル時間でいう夜」まで起きていようと思う。

……要するに、10時間経過後が本格的に眠るべき時間なのだ。

ところで、東京を21時20分に発ったのだが、軽食が出てくるのに結構な時間がかかった。ぼくがハイネケンのビールをようやく注文できたのは何と福岡の上空あたりであったのだ。

というのも高松上空あたりまでずっと乱気流の中にいたからだ。胃の中に入っているミネラルウォーターがタポンタポンと音を立てて揺れているのが感じられたから、結構な気流の荒れ具合だったのだろう。

CM開始。

先日、カマタマーレ讃岐というあまり勝ち星を重ねることが出来ていないチームが、ついに2勝目を上げた。カマタマーレ讃岐というのは、「釜玉うどん」の「カマタマ」を名前の由来とする香川県のJリーグクラブで、現在「夢のJ2」の舞台に昇格し、戦っている。

しかし、J2というのは非常にレベルが高いカテゴリーなので、若き「うどんの戦士達」は非常に苦戦していた。

……ぼくが思うに、カマタマーレ讃岐が勝つという「珍事」が起こったせいで、高松上空から札幌上空あたりまでの気流に異常が生じているのではないかと思う。

そう。ぼくが初めて高松にいって、カマタマーレ讃岐の試合を観に行った時は、札幌サポーターの大学生「つじー」と一緒だった。「つじー」はただの大学生ではなくて、サッカー観戦サークルtifosi(ティフォージ)を立ち上げた人物で、サッカーの話を始めると止まらなくなってしまう。

「讃岐うどん、運命の決戦」という章タイトルで、カマタマーレ讃岐のことを自著に書いたので是非読んで頂きたい!!!

『サポーターをめぐる冒険 Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった』
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CM終わり。

さて、「空の旅」はEmirates航空という中東の航空会社を利用している。キャビンアテンダントの女性が、みんな民族衣装風の服装をしていて、「イッツアスモールワールド感」に溢れていてとても素敵な感じ。サービスもいいし、座席も快適だ。アラビア系の人に「ようこそアラブへ!」っていうアラビア語を教わる一幕もあって、旅をしている感じがとても楽しい。ありがとうも教わったんだけどなんだっけな、イシュマイルじゃなくてシェラスコじゃなくて……いきなり忘れてしまったがなんだか中東のイメージが良くなっちゃうね。

ところで、結構英語って話せるものだね。
ぼくは英会話がとても苦手だし、ブラジルでは英語をいくら覚えていても役に立たないと聞いていたから、今回は事前に練習は一切していない。しかし、国際便に乗ってみると、機内で不便しない程度には話すことが出来た。

最近、旅の達人に色々教えてもらっているので、「英語力」は変わらないけど、「コミュニケーション力」を高めることができたのかもしれない。

日本語オンリーで何十ヵ国も回ってしまう女性とか、世界中飛び回って、各国に友達がいるちょんまげ隊のツン隊長だって、語学は全然駄目らしい。言葉を話せれば詳細なコミュニケーションは出来るように思えるが、そういうものでもないのかもしれない。

「エクスキューズミー アイドライク チャージ!! マイセルフォン バット、ディスプラグ!! イズ…… ノット……」

とか言えたら十分に意志を伝えることが出来る。「チャージ」を知っているかどうかは重要かもしれないが、ちゃんとした文章を組めなくても十分に通じさせることが出来る。それでは気持ちが伝わらない? 

ニッコリ大きく笑って、「サンキューベリーマッチ!!!」って言えばそれで解決する。


こうしてブラジルへの旅が始まった。

正直言って準備はとんでもなく大変だった。ブラジルワールドカップに行くというのは、世界のどこに旅行するよりも大変なのではないかという気がしてくる。これは、ブラジルに向かう同士達は素直に頷いてくれることなのではないだろうか。

しかし、これは自分のための旅だ。ぼくが行きたいから行くのだ。行かなくても誰にも迷惑がかからないし、誰かを悲しませることもない。ただ、ぼくがそこに行きたいから行くのだ。

青きユニフォームを身にまとい、地球の裏側で日本代表の試合をみるのだ。観戦するだけじゃない、全力で応援するのだ。コートジボワール、ギリシャ、コロンビア。強豪国ばかりだが、偉大なるザッケローニは切り札を隠している。

確証はないが、勝ち上がるために周到な準備をしているはずだ。ぼくはザッケローニを信じている。監督という立場の人を、これほどまでに好きになったことは一度もないのだ。

その穏やかな振る舞い、ウィットに効いた言動、そして優しく無難な言葉の裏にある強く揺るぎない精神。人に当たり散らすことなく、自分の中にだけ闘志を燃やし、勝利を求めて最善の策を練り続ける。

1人の人間が辿り着ける理想的な境地ではないだろうか。
彼はイタリア人だが、見事なサムライなのだ。

初戦でアルゼンチン代表を倒し、アジアカップの激戦を制した。そして、美しく破壊的なカウンター一発でフランス代表を沈め、コンフェデではあのイタリア代表を最後の最後まで追い詰めた。オランダ代表に引き分け、名声がうなぎのぼりであったベルギー代表に見事に打ち勝った。

武士道とは、死ぬことを見つけたり。
サムライは自分の死ぬタイミングを自分でコントロールすることが出来るため、死を超えた精神状態に達していると司馬遼太郎が語っていたように思う。

幼少期から、切腹の作法を教わり、いつでも死ねる覚悟を持つ。

いつか語ろうと思うのだが、ぼくも「死」を自分の中に抱えることで、爆発的な威力の活動をしてきたのだ。

ザッケローニも、自分の中に「死」を抱えているような気がしている。ブラジルで日本代表の成績が振るわなかったとしても、ザッケローニは無様な言い訳などしないだろうと思う。彼は自分で自分を殺すだろう。
そして敗因を整理し、4年間の歩みを総括し、今後の日本のサッカーがさらなる発展を遂げるような提言を残して去って行くだろう。

美しきザッケローニの魂よ!
ぼくはザッケローニが好きだから、今の日本代表は安心して応援することが出来る。正直いってJリーグを見始めると、日本代表の試合には物足りなさを覚えるようになってしまった側面もあるのだが、それでもザックジャパンは特別なのだ。

ぼくが初めて大好きにになったチーム。
青きザックジャパンの最後の集大成をこの目で見届けるのだ。

「夢を目指す生き方」を思い出させてくれた、ぼくが夢に向かってくれるためにエネルギーをくれたザッケローニと選手達。

勝ってくれると信じているが、必ず勝てる試合はない。ぼくに出来るのは、どこまでもついていくことだけだ。ワールドカップの舞台で、目の前で勝利するところを見ることが出来たら、一体どんな気持ちになるのだろうか。

さて、ブラジルまで後何マイル? 地球4分の3周分くらいは残っていると思うのだけど。


成田空港で大学生の男性、ドバイで20年鹿島を応援してきたという男性と知り合った。トランジションは5時間半もあるのだが、サッカー談義やブラジルの情報を交換しているうちにあっという間に時間が過ぎていく。

こういうのはとても楽しい。

というわけで、3人一緒にサンパウロを目指すことに。

「開幕戦をリオデジャネイロのパブリックビューイングで見ていたら、予想と違っていて非常に混乱した」ブラジルW杯紀行 第五話

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