人間が生存する上でもっとも不用なものは何か。
という議論をしだすと、生物屋とか医者とかが出てきて大論争になるのかもしれない。
だが、ぼくにとって最も不用なものは明らかだった。
それは……
虫歯の親知らず。
親知らずであるという時点でかなり役に立たたないのだが、虫歯であるという加点(あるいは減点)も加わって、本気で役に立たない物体と化していた。それほど痛いわけではないが、時折ズキズキ痛むことがあり、安眠を妨げる大変厄介な物体だった。
もちろん、歯医者に行って抜いてもらえばいい。それで終わりだ。しかし、歯医者というのは、一種の恐怖の象徴であって、そう簡単にいけるものではない。
歯医者に行きたくないという心情と、歯医者に行かないとどうにもならないという危機感、切迫した事情が拮抗している。歯医者にはどうしてもいきたくないのだけど、行かないことには生活に支障を来すとなった時、初めて歯医者の予約をするのだ。
ぼくの場合は、歯が気になって眠れないことがあるのと、執筆活動がさっぱり進まなくなってきたことで決断した。歯が痛い時に本など書けるか!!
診療の結果、「抜いたほうがいいよね。だって残しても下に歯がないからハミガキのジャマになるだけだよ。」ということになった。
ぼくが行った歯医者は最新鋭の装備があったようで、全く痛くない麻酔をしたあとに、全く痛くないように抜いてくれた。すごいね、奥歯を抜くのに痛みがないなんて。
歯医者では最新の医療技術が並んでいて、ホワイトニング、セラミックの詰め物、そしてインプラントが紹介されていた。インプラントというのは、入れ歯のすごいやつといえばいいのだろうか。入れ歯は上からかぶせるだけだが、インプラントは人工的な“歯の根っこ”を植え付ける技術で、入れ歯よりもはるかにしっかりしたものらしい。
歯医者のプロパガンダを聞く限りでは、デメリットはなさそうだった。いや、保険が効かないから非常に高額な点がデメリットといえるかもしれない(あと施術が痛いかもしれない)。まぁそういうものは、自分がやるときに検討すればいい。数十年後には全く様相は変わっているだろう。
今回の「オヤシラズヒッコヌキ」は痛くなかった。とはいえ、骨をゴリゴリされる不快な感じはあったし、抜いた後は流石に少し痛い。歯茎に穴が空いているのだ。というわけで、気分転換に漫画喫茶にいって、宇宙兄弟を読んでみた。なかなかいいけど買い集めたいほどではなかった。困ったときは漫画を読む、これがぼくの生き方なのだ。
困ったときに読み続けてきた漫画は、どうやら400種類近くあったらしい。カウントして採点してランキングをつけるという無謀な企画を転回中。400~300位のあたりは、誰も興味が無いだろうなぁ。
というわけで、無事に「身体の中で最もいらないもの」を除去してきたぼくは、「無敵」になった。今日はファン感謝デーなのでのんびりするとして、痛みが引くであろう明日からは気合を入れて執筆していこうと思う。