サッカーの選手名鑑ってあんまり面白くないなと、ぼくは常々感じていた。けど、エルゴラッソのJリーグ選手名鑑を見て、叫んだ。ブラボー!!これは面白い。擦り切れるまで読むことになりそう。
なぜサッカーの選手名鑑がいまいちだなと思っていたかというと、ぼくがこれまで手にしたものについては、紹介文の記述量がちょっと物足りなかったからだ。具体的な字数にすると100~200字程度だった。このくらいの字数だと、客観的な事実をいくつかいれるとあっという間に字数が足りなくなってしまう。
しかし、エルゴラッソ版選手名鑑の場合、選手一人あたり300~400字程度割いている。このくらいの字数だと、ライターが自分の主観を入れる余地が出てくるため、俄然面白くなる。表紙が怖いという評判がどこかに出ていたが、中身を読んだ後で見るとなかなかスタイリッシュに見えてくる。そのくらい中身が良い。
他の名鑑と読み比べたわけではないけど、これ以上のクオリティのものがあるとは考えづらい。
ライター目線の解説をすると、約20人の選手の紹介文を書くという作業は「大喜利」をしている感覚に近い。選手名というお題でいかに面白い文章を書けるかを競うのだ。選手名の上に「キャッチフレーズ」が書いてあるのだが、これは文字通り大喜利。
FC東京で言うと……
突進、突貫、そして突撃
松田陸
緊急事態に顔を出す。追加招集いつにでも
徳永悠平
これを全チーム分読むだけでも、ぼくは880円払える。こういうのは、簡単そうにみえて非常に難しい。叡智の結晶だと思う。
CBなのにめっちゃはやい
加賀健一
これは苦労したんだろうなぁ…… とか。
スピード違反
永井謙佑
というのを見て噴いたりとか…… とても楽しい。
ライターさんによって、「お笑い」が得意な人とそうでもない人がいて、そのへんの差を味わうのも面白いところ。
ライターとしてこういう仕事をやってみるとわかるのだが、「すぐに書ける選手」と「どれだけ考えてもなかなか書けない」選手がいるものだ。これは書くの楽そうだなぁとか、この選手は苦労したんだろうなぁとか、妄想しながら読むのもとても楽しい。そういった楽しみ方ができる選手名鑑に出会えたことは幸せだ。
他にも、この選手名鑑の優れた点は、J2のみならずJ3のチームまでカバーしていることが素晴らしい。圧倒的な情報量。圧倒的な熱量。圧倒的な愛情。今年はこの本を片手に全国を飛び回ることになりそうだ。
冒頭や中に時折出てくるコラムにも、Jリーグ愛が感じられて、なんかちょっと泣きそうになった。
ちょっと重すぎて持ち歩くのは大変だけど、それだけの価値はある。
はとのす及びはとのーとは、エルゴラッソの選手名鑑と「最後尾のエンターテイナー 千葉和彦」を応援してます!!