タイトルの通り、何と村井満チェアマンに会うことが出来たので報告したい!!
何故、そのような会談が実現したかというと……
まず、Jリーグアジア戦略室長の山下修作さんという方が『サポーターをめぐる冒険』を読んでくれて、「非常に面白かった」ということで、チェアマンに推薦してくれたらしい(山下さんについては近々お会いすることが出来そうなので、ここでは割愛)。
そして、チェアマンもうっかりページをめくってみたら、面白くて一気に読んでしまったとのこと(それはそうかもしれない、何せ前書きに書いてあるのは村井チェアマン就任後早々に起こったあの大事件なのだから)。というわけで、著者に会ってみたいということになったらしい。なんと嬉しい話だろうか。
しかし、チェアマンと一体何を話せばいいんだろう?
緊張しながら本郷にあるJFAハウスまで行ってきた。
JFAハウス、Jリーグのオフィスへ
写真は一切撮っていないので、文章でどんな雰囲気であったのかをお伝えしようと思う。オフィスビルは、お茶の水から本郷三丁目のほうに抜けていく途中にあった。
受付で来訪目的を告げ、Jリーグのオフィスがある階までエレベーターで登っていく。Jリーグのオフィスを発見し、入り口にある電話で広報担当の方を呼び出した。
そういえば、半年間だけ「ネット回線の営業」をしたことがあったのだが、その時登録した西新宿の人材派遣会社のオフィスも同じシステムだった。Jリーグのオフィスというと、雑誌の編集部みたいにもっと雑然としているのかと思ったら、非常に綺麗で驚いた。
さり気なく覗いてみたら、みんなデスクの上はきちんと整頓していて、とても清潔な印象だった。何より、各所にJリーグのロゴやグッズが置いてあるので、「俺たち」にとっては非常に親しみの湧く雰囲気であった。
後、一つ気になったのが、ぼくがチェアマン室に向かうときに、職員の皆さんとやたらと目があったことだ。綺麗なお姉さん達がちらりとぼくのほうを見て、目が合うとニコっと笑ってくれた。
「これ、どういうこと?」
チェアマン室で村井満さんと対面
チェアマン室に入ると、そこは非常に眺望のいいセンスの良い部屋だった。ドアから入ると右手には10人程度が座れる長机があり、奥にはチェアマンのデスクがあった。
Jリーグの重要事項は、ここで話し合われてきたのかと思うと、じんわりと胸が熱くなる。なかなか凄いところに来たものだ。
さて、村井チェアマンと対面し、簡単に挨拶した後、名刺を交換した。席に座ると第一声がこうだった。
「いやぁ、面白かったよぉ。一気に読んじゃったからね。」
と、『サポーターをめぐる冒険』を「絶賛」して頂いた。これは決して誇大な表現ではない。文字通り「絶賛」であった。
「こういう本は今までなかった。みんなが言いたくて言えなかったことを、文章にしてくれたと思う。Jリーグの公式本にしたいくらいだよ!」(発言主旨を記憶に基づいて再生)
こんなことまで言ってもらったのだ。「是非Jリーグと公式に提携したい!」と熱を入れて説得したら本気で何とかなってしまいそうな雰囲気だった。
そりゃお世辞的なニュアンスもあったと思うのだけど、素直にとても嬉しかった。もちろん、今回の企画では本気で提携することはないだろうけど、いつかそういう仕事が出来たら面白いかもしれない。
さて、質問をして頂いて答えたり、あるいはこちらが質問したりしているうちにいくつか気付いたことがあった。
チェアマンの第一印象は、「全然偉そうじゃないこと」。ぼくは、権力者的な振る舞いをされるのがあまり得意じゃないので、その人が自分の持っている権力にどの程度酔っているかを察してしまうことがある。
その「権力センサ-」が全く反応しなかった。外見上は、「そのへんの普通のおじさん」なのだ。部屋に入るまではかなり緊張していたのだけど、すぐにリラックスすることが出来た。
そして、印象的だったのは、「自分の言葉」で語る人であったということだ。発言に裏表を感じなかった。もっとオフィシャルで官僚的な感じなのかと思っていた。そのため、終始リラックスして会談することが出来たが、時折目がギラリと鋭く光って、深い質問をされることがあった。なかなか、刺激的な時間だ。
調べてみるとリクルートに勤めていた頃には相当な修羅場もくぐっている方のようなので、「ただのおじさん」ではないのだ。
Jリーグを発展させるために、何かアイディアはないかと幅広くアンテナを張っているようで、非常に好奇心旺盛な様子だった。余程好奇心が旺盛な方じゃないと、駆け出しの作家であるぼくに対してあちらから会談をセッティングすることはないだろう。
話した内容についてすべては書かないが、例えばAKBのイベントとJリーグのイベントの性質がどうかなんかを話す時間もあった(最もこのテーマについて私見はうまく言えなかった。JリーグはAKBを真似する必要は全くないと思っている)。様々なテーマについて話していると、以下の文章に似た主旨のことを語って頂いた。
今後、スポーツで地域を元気にしていくためには、その環境整備は重要だ。サッカーに限らず、様々なイベントが開催でき、近隣のショッピングモールやホテルなどとも併設される施設の整備は私の重要なミッションでもある。雨にも濡れず、トイレがきれいで、フードコートが広く、ショッピングモールに近ければ彼女をデートに誘えるはずだ。そんな夢を毎日のように広げている。番外編(チェアマン室のご案内)より引用
これはブログの文章であるが、発言趣旨が近いので引用した。
村井チェアマンからは「閉じたサッカー界」を感じなかった。オープンな考え方をされていた。そして、その視線の先には、「Jリーグが日常に溶け込んでいる風景」が見えていたようだ。
ぼくは世にも珍しい「サポーター目線で書かれた書籍の著者」として招いて頂いたはずだ。だから、「サポーター=観客目線の大切さ」をチェアマン説くつもりで行った。そのため、チェアマンに言おうと思い、用意していたのはこんな言葉だった。
「メインスタンドのお偉いさんがいる席じゃなくて、サポーターがいる席に座って試合を見てみるのもいいですよ」
しかし、そんな言葉は必要なかった。
意外な事実
5月17日、ぼくが甲府の中銀スタジアムに訪れた。その時、村井チェアマンも観戦していたのを目撃した。その日のことを話題に出してみた。ぼくは甲府サポーターの勧めでメインスタンドから観戦していたのだが……
その時、チェアマンは甲府のゴール裏から観戦していたらしい。
もしかしたら、記憶違いでゴール裏に近いバックスタンドだったかもしれないが、ともかくサポーター濃度が高いところから観戦していたとのことだ。
ぼくとしては「衝撃の事実」であった。村井チェアマンは各地のスタジアムに訪れた際は、ゴール裏から観戦することが多いらしい。周りのサポーターに気付かれることもあるけど、誰も気付かずにそのまま帰ることも多いのだそうだ。ゴール裏からみるのは、元ゴールキーパーからすると自然な光景だし、興奮が伝わりやすいから。ぼくと同じ考えだ!
スタジアムへと向かう道のりも、専用車やタクシーなどではなく、一般のお客さんが使うようなシャトルバス等を利用することが多いのだそうだ(そのため、Jリーグの職員はチェアマンを発見するのに苦労することもあるとか!)。
村井チェアマンは15年以上スタジアムに通っていた経験があるため、観客の気持ちについてはわかりすぎるほどわかっている方だったのだ。そのため、スタジアムでどうやって過ごすのが楽しめるのかをよく知っているし、サポーターの気持ちもよくわかっていた。
そのおかげもあって、ぼくとしては意見が全く対立せずに、非常に共感性の高い対談をすることが出来た。この気持ちの良さは、サポーターならみんなわかってくれるだろう。
Jリーグが大好きで仕方がない者同士が出会い、語り合った時の、「あの異様な楽しさ」をチェアマン室で味わうことが出来たのだ。
各クラブのサポーターは、是非後ろを振り返って探してみて欲しい。村井満チェアマンが見つかるかもしれない。そして話しかけてみて欲しい。きっと有意義な話が出来るだろうと思う。
恐らく、関係者の中には「サポーター=クレーマー」というような認識の人もいるのではないかと思う。しかし、村井チェアマンはサポーターを全く恐れていない。だから、一番熱心なサポーターが集う座席に平然と座ることが出来るのだ。
要するに、「“多くの”サポーターは怖くない」という事実をよく知っているわけだ。そして、ぼくの書いた『サポーターをめぐる冒険』には、大部分のサポーターが普通の人達であり、単にJリーグ(あるいは各クラブ)大好きなだけの人達であることを描いた。
なるほど……
「みんなが言いたくて言えなかったことを、文章にしてくれた」と仰っていたのはそういうことであったか。
というわけでチェアマン室で記念撮影!!
スタジアムの建設計画や、スタジアムデートの話で盛り上がったので、「青写真」の前でパシャリ。京都にも新スタジアムの計画あったの全然知らなかった!
チェアマンとの対談はあっという間だった。
やはりお忙しい方のようで、スケジュールの合間を縫って時間を作ってくれたらしい。
記念写真を撮って、チェアマン室を出るとまた「綺麗なお姉さん達」が素敵なスマイルを向けてくれた。帰りには理由がわかった。
村井チェアマンが、職員の皆さんにも『サポーターをめぐる冒険』を勧めてくれたらしく、既に読んでくれた方も多かったからだ。だから、「あれ書いた人が来るらしいよ!どんな人だろうね!」というような興味があったのだろう(妄想含む)。
なるほど、そういうことか。納得した。
そして、それはとても嬉しいことだ。
なんだかとても幸せな気持ちになった。緊張なんか全然する必要なかったね。
Jリーグの本部が事務的で、お役所的で、冷たい感じだったらどうしようかなぁと思い、若干そういった想定をして緊張していたわけなのだが、次からは気軽にいけそうだ。もし用事があれば、だけど。
Jリーグのオフィスを訪れてみて思ったのは、Jリーグの未来は明るいんじゃないかということ。これは、オフィスやスタッフの雰囲気や、チェアマンから感じられたことから、ぼんやりと思ったこと。
ぼくは本当に良い時期にJリーグに出会えたのかもしれない。
しかし、『サポーターをめぐる冒険』というのは、Jリーグを観戦し始めてから色々なサポーターと出会っていく話なのだが……
冒険、未だ終わらず。
思わぬことになったものだ。