はとのすマンガランキング。今回は95~91位。
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95位 今日の猫村さん
ほしよりこ
@NetHome(Webコミックス)
2003年7月より連載
思い出補正-4 つかみ-4 伸び-4 影響度-4 面白さ-3 夢-4
猫の家政婦が助けてくれる話。描かれているのは、日常的な光景なので夢はないのだが、「猫が働いてくれる!」というのは猫を飼っている人間にとって夢そのものなのだ。猫ってやつは、本当に何の役にも立たないものなのだ。
家政婦の猫村さんは、せっせと家事をするのだけど、その中で「ネコムライス」という料理が得意であることが判明する。ネコムライス、それはちょっと食べたいよ。猫がお昼にオムライスを作ってくれたらどれだけ楽ができるだろうか。
よくよく考えるとそれほど面白いストーリーではないような気もするのだが、猫村さんの可愛さと健気さに引かれて読み続けてしまう作品。言葉遣いが非常に丁寧なのも高評価。猫好きの友人や恋人あたりにプレゼントするにはお勧めの一作。
94位 トリコ
島袋光年
週刊少年ジャンプ
2008年25号 - 連載中
思い出補正-5 つかみ-4 伸び-3 影響度-2 面白さ-4 夢-4
女子高生にごにょごにょして捕まったしまぶー先生の作品。「幕張」の木多先生がさんざんネタにしたおかげで、島袋先生はぼくらの中で伝説となっていた。
女子高生のお金を渡してゴニョゴニョするのはいけないことだろうと思うが、だからといってその先の人生を全て断たれることはないと思っている。社会通念上悪いことは悪いことなので、反省するなり罪を償うなりすれば、ちゃんとカムバックできるようにしないといけない。次の作品が面白ければそれでいいのだ。
そして、出てきた「トリコ」はなかなか面白かった。ごにょごにょで打ち切りとなった「世紀末リーダー伝たけし」で面白かった「モービー編(戦うごとにランクがあがっていく変な島で、最終的にラスボスと戦う話(確か))を膨らませたような内容。
「食」と「ファンタジー」と「バトル」を合わせたような作品で、「食」に重点がおかれている点がなかなか珍しい。レベルの高い食材は捕獲も難しいものの死ぬほど美味しいという設定はなかなか良かった。最近はバトルものとしての側面が強調されているため、そういう意味では少し道を外した感がある。バトルもののほうが人気は出るだろうが、「グルメもの」の方を突き詰めるほうが作品の個性は際立つ。
個性を突き詰めすぎると子供の人気を失ってしまうというあたりが、ジャンプで連載する難しさなのかもしれない。
序盤は、子供にもわかりやすい内容でありつつも非常にスリリングかつ美味しそうなのでとてもお勧め。中盤以降も勢いで読める。正直、木多先生の「鬼いじり」がなかったらここまで高評価になっていなかったと思う。「喧嘩商売」には女子高生ハンターの島田というキャラが登場したりとか…… あれは笑ったなぁ。
というわけでしまぶー先生頑張って下さい。
93位 サクラテツ対話篇
藤崎竜
週刊少年ジャンプ
2002年1号 - 21号
思い出補正-5 つかみ-4 伸び-2 影響度-3 面白さ-4 夢-4
なんだかわけがわからない作品で、わけがわからないまま終わってしまった。登場人物が哲学者をモチーフにしていて、シュールながらも非常に深みのある作品だった。しかしながら、過剰なまでのギャグタッチで描かれているため、本当の意味でカオスだった。よくこれがジャンプに掲載されたものだ。大好きな藤崎竜の作品なので思い出補正は5。つかみは良かったが、最終的にはわけがわからなくなってしまった。
主人公桜テツは、都内の一等地にあるボロ一軒家を所有していた。その土地を何としても守りたいという強い意志を持っていたテツだが、ある日を境に、色んな人達がその土地を奪いに現れる。地底人、宇宙人、未来人、妖精など。登場人物が1人増える度に話がわからなくなっていくのだが、全く気にすることなくハイテンションに物語は突き進んでいく。異様な作品だし、アーティスティックでもある。
涼宮ハルヒが望んだ世界はこういう感じなんだろうなという気がする。
こういう作品には、「読者の分身」となってくれる当たり前の思考をする常識人が「触媒」として必要なのではないかと思うのだが、誰にも共感できないまま突っ走っていった希有な作品だったと言える。いや、いたかもしれないのだが、忘れてしまっているだけかもしれない。
強烈なインパクトを残しながらも内容をうろ覚えという非常に珍しい作品。もう一度読み直したい。
92位 もやしもん
石川雅之
イブニング
月刊モーニングtwo
2004年16号 - 2013年10号
2013年8月号 - 2014年3月号
思い出補正-4 つかみ-4 伸び-4 影響度-3 面白さ-4 夢-3
細菌学の大学院の研究室を舞台にした作品。内容は研究について扱っているが、メインキャラクターが大学院生ではなく学部生なので、それほど陰惨にならずに健康的に大学生活を楽しめているのがほっとする。大学院生になると、兵隊化しちゃうからお祭りなんかやってる暇なくなっちゃうしね……
主人公が「細菌が目に見える」という特殊能力を持っていて、当初は主人公を中心に物語が展開していた。しかし、途中からは、文字通り「細菌」のほうが主役になっていき、主人公がいなくても物語の進行に全く支障がなくなってしまった。発酵食品などを中心に細菌についてのウンチクが非常に専門的に書かれているので、そこが見所の1つ。
そしてもう一つの見所は、強く言いたい。血の涙を流しながら言いたい!!!
大学生活はこれでええんや!!!
この持てなそうな感じ、結局野郎でつるんでる感じ、無駄に飲んだくれている感じ、自分たちがいま一番だぜと勘違いしちゃってる感じ。これこそが大学生活なんだ!! イケてるサークルなんか入らなくて良い。ぼくらは大学では地下に潜伏していたのだ。いつか花咲くことを夢見て。
泥臭い日常の中にも、アカデミックな香りが吹く。これが大学生の青春なんや……これでええんや……
91位 百舌谷さん逆上する
思い出補正-4 つかみ-3 伸び-5 影響度-3 面白さ-4 夢-3
篠房六郎
月刊アフタヌーン
2008年3月号 - 2013年9月号
この作品は知らない人も多いかもしれない。ツンデレというテーマを「過剰に」掘り下げた作品。
ぼくが泊まりがけで実験していた海辺の研修寮に知人が持ち込んだ作品で、何のこともなく読み始めた。一般的に「ツンデレ」とは、愛情を示されると照れて素直でいられなくなる現象のことである。
基本例文はこんな感じ。
「ぼく、君のこと好きだよ」
「うるさいわよ、このバーーカ!!!!」
ツンデレにも様々な分類があるようで、その筋の人に聞くと長くなるらしい。整理されているサイトを読んだことがあるが、例示されているのが一般的な作品ではなく18禁の世界なのでさっぱりわからなかった。何とか理解した中に「強ツンデレ」という属性があった。その例文を作るならこんな感じ。
「自分は何があろうと上官について参ります!!!」
女軍人
「戦場で私情を出すなと何度言ったと思っておる。腕立て1000回。 (……ふっ、こやつも可愛いところがあるな)」
これであっているのか若干自信がないが、ツンデレの強度というのはこのあたりが最強であったのだろうと思う。しかし、この「百舌谷さん」ではさらに上が出てくる。
それが「ツンデレ病」というもので、自分への好意を示されると、暴力的になってしまう発作が起こるという病気としてツンデレを描いている。基本的に人間同士の関係性は「好意」を依り代にして成立している。
何かをしてもらった際に「いつもありがとう」という気持ちを込めたメッセージを伝えることで関係性が成立するのだ。しかし、百舌谷さんは「ありがとう」と言われてしまうと発作が起こってしまう。好意や感謝などはもってのほかなのだ。だから常に孤独でないといけない。物語は暴れる百舌谷さんと、ひょんな切っ掛けから百舌谷さんと交流することになり「M性」が目覚めてしまう地味な学生を軸に、コメディタッチに展開していく。しかし、その裏には病気の辛さ、誰とも交流できない寂しさが常にある。
そして、読み進めるうちに、涙が洪水のように溢れていった。「愛情がゼロ」の世界に出て行く百舌谷さんを描いた物語は、裏を返すと強烈な愛情を描いた作品でもあったのだ。この作品にはやられた。まだ最後まで読んでいないので、近いうちに読み進めたい。もし完読していたらランクアップしていた可能性が高い。実に力のある面白い作品だ。とてもお勧め。
というわけで95~91位が終了。
なかなか熱い作品が揃っていると思う。
前
100~96位。
次
90~86位。