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「我々はサポーターであったのか」ブラジルW杯紀行 第九話

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第八話「地球の裏側で君が代を歌う時」

引き続き簡易的な更新とする。
コートジボワール戦について

 

試合前の雰囲気。

ちょうど雨が降ってきて、みんなコンコースに避難してきたところ。コンコースからの眺めは、今まで見た中でも最高だった。

日の丸を背負ったブラジル人らしき姿も。

 

応援する日本代表サポーター。ウルトラス植田朝日さんの姿も。

これが日本代表の応援団。
……しかし、声を出して応援し続ける集団は、スタジアム広といえどもここにいた300人程度だけだった。

もちろん各所に点在していたとは思うのだが、ぼくの位置からは見つかられなかった。ある程度の塊として、日本代表の応援をしていたのは、ぼくのいたエリアだけだった。

そしてその人数は多く見積もっても500人ほどだろう。スタジアムを埋めたのは40000人で、日本人も10000人くらいはいたとは思うのだが……

今まで見たどの試合よりも応援の声は小さく、頼りなかった。


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加勢してくれるブラジル人もいたが、焼け石に水。とても頼りない応援だった。すぐ目の前には、日の丸を背負った「代表サポーターのように見える人達」もいたのだが、声を出して応援するという気がない人が多かった。

もちろん、声を出すも出さないも自由だ。そして、声の量が大きかったからといって試合の行方が決まるわけではない。

しかし、どの程度の量かはわからないが試合の趨勢に影響を与えることは間違いない。ホームの雰囲気が作れるかどうかは、チームが勢いを失わないためにも非常に重要なことなのだ。

応援の中心である「ウルトラス」の方だろうか、拡声器を使って「前の方もっと声を出そうぜ!!もっともっと応援しようぜ!!!」と呼びかけていた。しかし、ゴール裏の前方は不気味なくらい沈黙していた。

みんな派手な仮装をしているのに。

応援の規模は、国内で見た代表戦の10分の1以下だろうか。そもそも代表戦の応援だって、Jリーグの応援に比べるとはるかに「ささやかな」ものなのだ。

ブラジルまでわざわざ来ている人は、どうやら生粋のサポーターというわけではないらしい。聞いてみると、初めてのサッカー観戦という人もいるようだ。

お祭りに参加すること、ちょっと変わった旅行にチャレンジすることを通して楽しみたいという人が多く、「何がなんでも日本代表を後押ししたい」という硬派な人、すなわちサポーターは少ないようだ。

ユニフォームを来ていれば自動的にサポーターになるわけではない。チームを支えること、支えるために自らの身を投げ出すこと、無私の心こそがサポーターの精神なのだ。

そういう意味では、サポーターの濃度は非常に低かった。かくいうぼくも、旅程の準備の大変さや、合間に観光を入れるために調整もした。その結果、日本代表への思いが薄まったのは間違いない。

わざわざブラジルまで来ているのに!!

そんな中、本田圭佑がゴールを決めた。
久々に見るコンディションの良い本田が、悪い流れを引き裂いた。

ぼくは後ろに座っていたブラジル人と熱くハイタッチをした。

スタジアムは気楽に盛り上がっていた。そう、何か雰囲気が軽く、気楽なのだ。Jリーグにおける重要な一戦では、もっと真剣な空気が張り詰めるのに、どこもかしくも緩い表情をして談笑している人ばかりなのだ。

そんな中、サンパウロの空港で出会った青年 ー夢と書かれた弾幕を掲げるサポーターグループの一員らしいーは、鋭い表情で真剣に応援し続けていた。

あれが、サポーターの顔というものだ。彼の目はピッチしか見ていなかった。応援することしか考えていない。だからこそ、試合に誰よりも深く入り込むことが出来る。負ければ失意の底に落ちるが、勝った時には自分のことのように喜ぶことが出来る。

チームとの同質化こそがサポーターの精神だ。そして、情けないことにぼくはそこまで入り込めていなかった。


ヤヤ・トゥーレという怪物は、やはり違っていた。大きな身体、力強い躍動、足は速く、ボールタッチが非常に柔らかい。

テレビでみる以上に素晴らしい選手だった。今まで見た中でも別格の選手だ。

ヤヤを中心とした力強いオフェンスに、日本代表は押し込まれていった。何度も何度もピンチを迎える。肝を冷やすが辛くも防いでいく。

ぼくは必死で応援していたのだが、蓄積した疲労、睡眠不足によって声が枯れて全く出なくなってしまった。どうしようもない、押し黙って気合いを送るしかない。

そんな中、コートジボワールの英雄、ドログバがピッチに現れた。破滅への序曲。

本物のワールドクラスを守り切る力は日本には残されていなかった。獣の如き力強いフォワードによって日本のディフェンスは崩されていった。

日本が……決壊していく……

悪夢のような瞬間が訪れた。立て続けに2点を取られて一気に逆転されてしまったのだ。

致命的な失点だ。せめて引き分けにしないといけない。日本は攻め上がるしかない。しかし、攻めようと思うとすぐにカットされて、恐ろしすぎる力強いカウンターへと繋がれてしまう。

そして時間が失われていく……

スタジアムは、完全にコートジボワールのホームとなっていた。踊り狂う応援団は勢いづき、スタジアムの各所からコートジボワールに対する声援が湧き上がってきた。

しかし、残り15分を切った頃、ゴール裏に変化があった。今までうんともすんとも言わなかった前方の住人が、チャントに参加し始めたのだ。

ニッポン! ニッポン! ニッポン! ニッポン! ニッポン!

今までは旅先で仮装ショーでも見ている感覚に近かったのかもしれないが、敗色が迫ってきたことで、気付いたのだろう。

今自分たちが直面しているのは、気楽なショーではない。我々日本を代表するサッカー選手達が、全人生をかけて勝負する運命の舞台であることを。

日本は恐らくプランになかったであろうパワープレイを仕掛けた。そこまで追い詰められていたということだろうが、コートジボワール相手にパワープレイをしたところで勝てる見込みはない。

我々の日本代表の初戦は敗北に終わった。

負けた後、今まで一番大きなニッポンコールが巻き起こった。もちろん、それでもささやかな大きさだったが、この日では最も大きいコールの1つだった。

コールの後、ブラジル人だろうか。バモスニッポンのコールを必死にしてくれていた。ぼくは申し訳ない気持ちで一杯だった。

この2人のブラジル人ほど、汗だくになるほど、必死に応援した日本人がどれほどいたのだろうか。

いや、周りの人を責めても意味がないし、他人のやり方にどうこういうのは筋違いだ。

疲労して途中から声が出なくなってしまった自分を恥じた。ぼくは、本当に苦しい時に選手の背中を押すことが出来なかった。

不調の大迫を後押ししようと、「オオサコ- オオサコー オッオッオオサコー」というチャントが何度か歌われた。

しかし、このコールに参加する人数は悲しいほど少なかった。みんな普段Jリーグを見ていないのだろう。その時だけは全力で声を出した。声はガラガラだったが、何とか大迫には前を向いて欲しかった。


試合後、日本が負けたショックで茫然自失としてしまった。あまりの悔しさに泣きたくなった。

その時20分くらいだろうか、話しかけられても返事が出来なかったらしい。そのくらい悔しかった。悔しくて悔しくて仕方がなかった。

地球の裏側まで来て日本代表の敗北を見る。試合の結果についてはしょうがない。しかし、ちゃんと応援できなかった自分に腹が立った。これじゃ駄目だ。

ぼくはブラジルまで遊びに来たわけではないはずなのだ……


しばらくして、そのへんを歩いていたよこちんに、悔しくてどうしようもないと告げると、「まぁ……ドイツの時よりはマシだよ……」とオーストラリア相手に大逆転負けを喫した時のことを話してくれた。

日本代表サポーターというのは、ワールドカップ予選の通過に苦労していた頃にはたくさんいたらしい。みんな必死になって応援してたとのことだった。

しかし、今は、ブランド力が高まったこともあってか、普段はサッカーをみていない人が来ることが増えたとのことだった。

もちろん、それは悪いことではない。彼らの物語はこれから始まるのだ。

願わくば、今回のことを切っ掛けとして身近にあるサッカーを愛すことを始め、誰かを応援するということがいかに充実したことかを知って欲しいなと思う。


これから始まるのはコートジボワールvsコロンビア。

そして、運命のギリシャ戦が始まる……

全力で応援するぜ!!!!!

何のためにここまで来たと思っているのだ。

第十話 「クイアバでのんびり過ごし中」


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